先発医薬品でも後発医薬品でもない基礎的医薬品とその扱いについて〜H28年(2016)薬価基準改定①

今回は診療報酬改定ではなく、薬価基準改定についてまとめて見ます。
この4月から新設された基礎的医薬品というものはご存知でしょうか?
3月までは安かった後発医薬品が、4月からは先発医薬品と同じ薬価になっていたり、後発医薬品数量シェアの計算式から除外されていたりする場合があるのはご存知ですか?

H28調剤報酬改定についての過去記事はこちらです。
なお、疑義解釈等が公開されて初めて考え方がわかるものもあるので、あくまで現時点での一人の薬剤師の解釈として捉えてもらえれば幸いです。
解釈に変更等があれば随時更新する予定です。
https://yakuzaishi.love/archive/category/%E8%A8%BA%E7%99%82%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A-%E5%B9%B3%E6%88%9028%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%882016%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%89%E8%AA%BF%E5%89%A4%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A

厚生労働省のホームページで公開されている「疑義解釈資料の送付について(その7)」はこちら。
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=381888&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000136971.pdf#page=5

基礎的医薬品とは?

今回、新たに新設された「基礎的医薬品」についてまとめます。
「基礎的医薬品」とは、医療現場に必要不可欠な長期収載医薬品を保護するための制度です。

長期収載品が抱えている問題

医薬品は薬価基準収載後、2年後の改定のたびに薬価が引き下げられていきます。
薬価収載から25年(実際には24年)が経過するとその薬価は半額以下になってしまいます。

これに対して、長年にわたって医薬品を安定供給するためには、老朽化する設備の維持等、様々なコストがかかります。
また、新規医薬品が新たに登場していくことから、古い医薬品の使用量はどんどん減少していきます。
さらに、後発医薬品への切り替えが進まない長期収載の先発医薬品の薬価を大きく引き下げるZ2という制度も存在します。

古い医薬品であっても、医療現場で欠かすことのできない医薬品は少なくありません。
ですが、薬価が引き下げられ、採算が合わなくなってくると、製薬メーカーはその医薬品を安定して供給し続けることが難しくなってしまいます。

医薬品の安定供給維持のために行われてきた制度

販売開始から長年を経た医薬品の採算が合わなくなってしまうケースを防ぐための取り組みはこれまでにも存在しました。
薬価基準改定の際に、採算が取れなくなった医薬品の薬価を引き上げる「不採算品再算定」というルールです。
ですが、それによって一時的に薬価が引き上げられても、次の改定からは再び薬価の引き下げを受けていくことになります。
一時的に採算を合わせても、結局、数年後には再び不採算になってしまう可能性が高いです。

医薬品の安定供給を保護する基礎的医薬品

そこで、平成28年の薬価基準改定に合わせて新設されたのが「基礎的医薬品」です。
「基礎的医薬品」に指定された医薬品は、薬価改定の際の薬価の引き下げを受けず、薬価が維持されるようになります。
そうすることで、医療現場に必要不可欠な医薬品の安定供給を維持することが可能になります。

医療現場に必要不可欠な医薬品

通知等には明確な定義は記載されていませんが、

  • 一般的なガイドラインに記載され、広く医療機関で使用されているなど汎用性のあるもの
  • 古くから医療の基盤となっている病原生物に対する医薬品
  • 医療用麻薬

が基礎的医薬品に指定されています。

長期収載品の全てが基礎的医薬品に指定されるわけではない

今回の薬価基準改定で「基礎的医薬品」に指定されるのは、医療現場で25年以上使用されており、医療現場に必要不可欠な医薬品のうち、過去の不採算品再算定品目等、採算が取れなくなる可能性が高いものです。
今回の改定では134成分(品目数:439品目)が対象となっていますが、WHO(世界保健機関)が指定している、エッセンシャルドラッグは約300成分です。
「基礎的医薬品」という名前を考えると、エッセンシャルドラッグ全てが指定されるべきなのかもしれませんが、医療費高騰の問題を考えると、慎重に指定を行わなければならないのだと思います。

基礎的医薬品による薬価の維持

同じ成分で複数の品目が基礎的医薬品に指定された場合は、同成分で最も販売額が大きい品目の薬価に統一された上で、薬価が維持されます。
ここで注意してい欲しいのは、同一成分で先発医薬品、後発医薬品が存在する場合、その全ての品目が基礎的医薬品に指定されるわけではなく、条件によっては、同じ成分でも指定される品目と指定されない品目に別れてしまうということです。
もちろん、基礎的医薬品に指定されなかった品目は通常通り薬価の引き下げを受けます。

例を挙げて説明すると以下のようなイメージになります。
(イメージなので細かい部分は適当です)
平成26年薬価基準

  • 先発医薬品(薬価:100円)
  • 後発医薬品1(薬価:50円)
  • 後発医薬品2(薬価:50円)
  • 後発医薬品3(薬価:50円)

↓ 薬価改定
平成28年薬価基準

  • 先発医薬品(薬価:100円)※基礎的医薬品
  • 後発医薬品1(薬価:100円)※基礎的医薬品
  • 後発医薬品2(薬価:100円)※基礎的医薬品
  • 後発医薬品3(薬価:40円)

 

基礎的医薬品に関する詳しい説明

厚生労働省の資料から引用します。
薬価算定の基準について(保発0210第1号、平成28年2月10日)
基礎的医薬品

(1)基礎的医薬品
薬価改定の際、次の全ての要件に該当する既収載品(十分な収益性が見込まれるものを除く。)については、薬価改定前の薬価(当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬がある場合には、薬価改定前の薬価を基に計算した年間販売額が最も大きい銘柄の薬価改定前の薬価)を当該既収載品の薬価とする。
ただし、当該既収載品と組成、剤形区分が同一である類似薬があり、汎用規格の当該類似薬がニの要件を満たさない場合については、別表9に定める算式により算定される額を当該類似薬の薬価とする。この場合 において、別表9中「低薬価品群、準低薬価品群又はその他の後発品群」とあるのは、「基礎的医薬品と組成、剤形区分及び規格が同一である基礎的医薬品に該当しない類似薬群」と読み替えるものとする。

  • イ 医療上の位置付けが確立し、広く臨床現場で使用されていることが明らかであること
  • ロ 当該既収載品並びに組成及び剤形区分が同一である全ての類似薬のうち、薬価収載の日から25 を経過しているものがあること
  • ハ 当該既収載品と組成及び剤形区分が同一である類似薬がある場合に は、当該既収載品を含む類似薬の平均乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと
  • ニ 当該既収載品の市場実勢価格の薬価に対する乖離率が、全ての既収載品の平均乖離率を超えないこと

上に、同じ成分でも指定される品目とそうでない品目があると書きましたが、ここに書いてある剥離率によって指定を受けれるものとそうでないものに分かれるということだと思います。

基礎的医薬品に指定された品目一覧

厚生労働省のホームページに基礎的医薬品に指定された品目が公開されています。
(別添7)基礎的医薬品対象品目リスト

基礎的医薬品は先発医薬品でも後発医薬品でもない?

薬局にとって注意しておきたいのが、これまで後発医薬品として扱っていた品目の中で、基礎的医薬品に指定された医薬品の扱いについてです。
厚生労働省のホームページの記載を見てみると、
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について

5.その他(各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報)
各先発医薬品における後発医薬品の有無及び後発医薬品について、1:後発医薬品がない先発医薬品(後発医薬品の上市前の先発医薬品等)、2:後発医薬品がある先発医薬品(先発医薬品と後発医薬品で剤形や規格が同一でない場合等を含む。ただし、全ての後発医薬品が経過措置として使用期限を定められている場合を除きます。後発医薬品と同額又は薬価が低いものについては、「☆」印を付しています。)と3:後発医薬品(先発医薬品と同額又は薬価が高いものについては、「★」印を付しています。)として分類しています。なお、昭和42年以前に承認・薬価収載された医薬品及び平成28年度診療報酬改定における「基礎的医薬品」の対象成分については、「各先発医薬品の後発医薬品の有無に関する情報」は空欄となっています。
「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」(厚生労働省平成25年4月5日)に基づく後発医薬品の数量シェア(置換え率)における『後発医薬品のある先発医薬品』が2で分類される品目であり、『後発医薬品』が3で分類される品目であるため、置換え率を算出する際には、こちらの情報をご活用ください。

※後発医薬品の数量シェア(置換え率)
=〔後発医薬品の数量〕/(〔後発医薬品のある先発医薬品の数量〕+〔後発医薬品の数量〕)
=〔3で分類される品目の数量(★を除く)〕/(〔2で分類される品目の数量(☆を除く)〕+〔3で分類される品目の数量(★を除く)〕)

下線部に記載されているように、「基礎的医薬品」は診療報酬における先発医薬品でも後発医薬品でもないという扱いになっています。
そのため、後発医薬品調剤体制加算に関する数量シェアの計算式からは除外されるようになります。
ちなみに、基礎的医薬品に指定されていない品目でも、同一成分が基礎的医薬品に指定されていれば、先発医薬品でも後発医薬品でもないという扱いになっていますね。
これは、改定前に、今回基礎的医薬品に指定された医薬品の代替調剤を行うことで、数量シェアを達成していた薬局にとっては辛いですね。

基礎的医薬品であってもこれまで通り変更調剤は可能

ちなみに、後発医薬品への代替調剤自体については別の話です。
これについては、疑義解釈その7で、「平成28年3月31日まで変更調剤が認められていたもの」についてはこれまで同様、変更調剤を行うことが可能と回答されています。

基礎的医薬品にもれた後発医薬品は統一名称に

一部の後発医薬品の薬価基準上の名称が成分名に統一されています。
先発医薬品や他の後発医薬品が基礎的医薬品に指定されたにも関わらず、その指定にもれてしまった後発医薬品は一般名による統一名称で薬価基準に収載されています。
ノルフロキサシン錠100mg、ノルフロキサシン錠200mgやセファクロル100mg細粒、セファクロル200mg細粒などが代表的なものですね。
レセコンの表示が今までと変わっているメーカーもあるようですね。

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