院外処方が制限されるケースは様々なものがありますが、
この記事では
- 処置に使用される薬剤
- 検査(前)に使用される薬剤
- 手術(前)に使用される薬剤
についてまとめます。
実際に、処置や検査、手術に用いる薬剤の処方を受け付けたことはありますか?
当然といえば当然なのですが、検査や処置、手術に用いる薬剤は院外処方ではなく、院内で投薬(正確には使用)され、請求されるべきものです。
この記事では処置・検査・手術に関する医薬品の処方に関する考え方についてまとめます。
検査・処置・手術で使用する薬剤の処方
検査・処置・手術で使用する薬剤院外処方せんになじまないものとされています。
最新の医科診療報酬点数表に記載されている内容を掲載しておきます。
第3部 検査
通則
- 2 検査に当たって患者に対し薬剤を施用した場合は、特に規定する場合を除き、前号により算定した点数及び第5節の所定点数を合算した点数により算定する。
第5節 薬剤料
区分D500 薬剤:薬価が15円を超える場合は、薬価から15円を控除した額を10円で除して得た点数につき1点未満の端数を切り上げて得た点数に1点を加算して得た点数とする。
- 注1 薬価が15円以下である場合は、算定しない。
- 2 使用薬剤の薬価は、別に厚生労働大臣が定める。
第6節 特定保険医療材料料
区分D600 特定保険医療材料:材料価格を10円で除して得た点数
- 注 使用した特定保険医療材料の材料価格は、別に厚生労働大臣が定める。
第10部 手術
通則
- 2 手術に当たって、第3節に掲げる医療機器等、薬剤(別に厚生労働大臣が定めるものを除く。)又は別に厚生労働大臣が定める保険医療材料(以下この部において「特定保険医療材料」という。)を使用した場合は、前号により算定した点数及び第3節、第4節若しくは第5節の各区分又は区分番号E400に掲げるフィルムの所定点数を合算した点数により算定する。
第4節 薬剤料
区分K940 薬剤:薬価が15円を超える場合は、薬価から15円を控除した額を10円で除して得た点数につき1点未満の端数を切り上げて得た点数に1点を加算して得た点数とする。
- 注1 薬価が15円以下である場合は、算定しない。
- 2 使用薬剤の薬価は、別に厚生労働大臣が定める。
第5節 特定保険医療材料料
区分K950 特定保険医療材料:材料価格を10円で除して得た点数
- 注 使用した特定保険医療材料の材料価格は、別に厚生労働大臣が定める。
第9部 処置
通則
- 2 処置に当たって、第2節に掲げる医療機器等、薬剤又は別に厚生労働大臣が定める保険医療材料(以下この部において「特定保険医療材料」という。)を使用した場合は、前号により算定した点数及び第2節、第3節又は第4節の各区分の所定点数を合算した点数により算定する。
第3節 薬剤料
区分J300 薬剤:薬価が15円を超える場合は、薬価から15円を控除した額を10円で除して得た点数につき1点未満の端数を切り上げて得た点数に1点を加算して得た点数とする。
- 注1 薬価が15円以下である場合は、算定しない。
- 2 使用薬剤の薬価は、別に厚生労働大臣が定める。
第4節 特定保険医療材料料
区分J400 特定保険医療材料:材料価格を10円で除して得た点数
- 注 使用した特定保険医療材料の材料価格は、別に厚生労働大臣が定める。
検査にしても、処置にしても、手術にしても15円までの薬剤料は点数に含まれているという考えです。
それを超えて必要となった薬剤については、院内で請求されるべきものとなっています。
ですが、頻繁に使用されないものや普段院外処方されているものについては、
- 院外処方箋を発行
- 保険薬局で調剤
- 調剤されたものを持参してもらい使用
という流れにすればいいのではないかと考えてしまうことがあるかもしれませんが、実際には院内で使用する薬剤については院外処方になじまないものとされています。(完全に禁止というわけではない)
検査で使用する薬について
まずは検査薬について。
よくあるのは、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)前のラキソベロン液やプルゼニド、ニフレック、マグコロール、モビプレップなどです。
また、心臓CT検査前のメトプロロール酒石酸塩(セロケン)も該当します。
「検査の前日に服用」「検査当日に服用」と記載されていたり、そのような指示があれば該当する可能性が高いです。
検査薬の調剤
検査に使用する薬を院外処方することは禁止されているわけではありません。
ただし、その場合は下記に記載されているように薬剤料以外は算定不可となります。
【各種調剤の保険請求について】
手術前投薬、検査前投薬について
手術や検査にかかわる薬剤は、院外処方せんによる供給にはなじみません。
それは、医療機関の請求において、「投薬」ではなく「手術」や「検査」の項目に記載されるものであり、処方料も調剤料も算定することはできないとされているからです。
従って、手術前・検査前の薬のみが記載された院外処方せんを発行した場合、医療機関では処方せん料を算定することはできません。
また、これを受けた薬局は、調剤基本料や薬剤服用歴管理指導料等を算定することは出来ず、薬剤料のみ請求せざるを得ません。
もし、処方せんが発行された場合は、
- 病院は処方せん料の算定不可
- 薬局は薬剤料のみ算定可能(調剤技術料と薬歴管理料は算定不可)
ってことになります。
実際に返戻を受けたこともあるので怪しいなあと思ったら疑義照会をしなければいけませんね。
検査時に処方が考えられるもの
検査前に使用される薬を列挙してみます。
- 大腸内視鏡検査前
- ラキソベロン内用液0.75%
- ピコスルファート内用液「各社」
- ナイリンドライシロップ1%
- ピコダルム顆粒1%
- ニフレック配合内用剤
- ニフプラス配合内用剤
- オーペグ配合内用剤
- ビジクリア配合錠
- マグコロール
- マグコロールP
- モビプレップ
- ピコプレップ配合内用剤
- ムーベン配合内用液
- 心臓CT検査前
- セロケン
- メトプロロール酒石酸塩錠「各社」
- 脳波・心電図検査等
- トリクロリールシロップ10%
処置で使用する薬について
次に処置薬について。
2012年ごろ(この記事を最初に作成した時)の話ですが、当時勤務していた薬局近くの診療所の受付さんから電話で相談されました。
「イソジン液を処方したいんだけど可能ですか?」
「処置に使いたいんですけど病院に在庫がないので薬局で仕入れて欲しいんです。」
今となっては「おそらく」の話なんですが、イソジン液を処方して初日は院内で処置を行い、翌日からは自分で使用してもらうケースだったんだと思います。
教科書的に言えば、以下のような流れ。
- 処置の際のイソジン液は院内のものを使用(薬剤料はおそらく15円に満たないので請求しない)
- 院外処方でイソジン液を処方
- 翌日からは自宅で本人がイソジン液を使用
ですが、先に院外処方を発行してそのイソジン液を持参してもらっても請求上は区別がつかないですよね。
一度薬局に行った後に再度医療機関に戻って処置を受けるというのはどうなのかはわかりませんが・・・。
(この時は薬局にそもそも在庫していなかったので話が流れました)
補足ですが、器具の消毒、手指の消毒のみに使用される場合は、当然、院外処方せんの発行は認めらません。
処置時に処方が考えられるもの
処置に使用される薬剤を考えてみると・・・。
- 消毒薬(イソジン液、マスキン水など)
- 抗生物質外用薬(ゲンタシン軟膏、アクロマイシン軟膏など)
- 褥瘡治療薬(ゲーベンクリーム、ユーパスタコーワ軟膏、アクトシン軟膏など)
- 浣腸(ケンエーG浣腸など)
- ペンレステープ(透析:血液透析用血管留置針使用の場合)
このあたりでしょうか?
訪問看護等で使用する場合も処方されたものを使用すると思います。
保険請求で判明することもないと思うので実際には院外処方でも問題ないケースがほとんどかと思います。
ただし、コメントや薬歴に記載してあれば突っ込まれますよね。
手術前に使用する医薬品について
最後に手術前に使用する医薬品についてです。
「手術当日朝に服用」など記載されいてる場合が当てはまります。
手術前薬の調剤
【各種調剤の保険請求について】
手術前投薬、検査前投薬について
手術や検査にかかわる薬剤は、院外処方せんによる供給にはなじみません。
それは、医療機関の請求において、「投薬」ではなく「手術」や「検査」の項目に記載されるものであり、処方料も調剤料も算定することはできないとされているからです。
従って、手術前・検査前の薬のみが記載された院外処方せんを発行した場合、医療機関では処方せん料を算定することはできません。
また、これを受けた薬局は、調剤基本料や薬剤服用歴管理指導料等を算定することは出来ず、薬剤料のみ請求せざるを得ません。
もし、処方せんが発行された場合は、
- 病院は処方せん料の算定不可
- 薬局は薬剤料のみ算定可能(調剤技術料と薬歴管理料は算定不可)
ってことになります。
手術前の処方が考えられるもの
過去に見たことがあるのは眼科手術前に使用する点眼薬くらいです。
ただし、「眼科周術期の無菌化療法」については適応を取得している薬剤があり、その場合は院外処方が可能のようです。
【各種調剤の保険請求について】
眼科周術期の無菌化療法について
手術に使用する薬剤は、検査薬と同様、院外処方せんになじまないものとされていますが、「眼科周術期の無菌化療法」の適応を持っている抗生剤点眼薬が術前に投薬される場合、医療機関の処方せん料、薬局の技術料、共に算定可能であると判断します。
従って、「眼科周術期の無菌化療法」の処方せんを受け取った場合、また、通常の処方に加えて、このような薬剤が処方された場合、通常通り、基本料や技術料、指導料を算定して請求してください。
「眼科周術期の無菌化療法」の適応を取得している薬剤をまとめてみます。
- アクロマイシン末
- オゼックス点眼液0.3%
- トスフロ点眼液0.3%
- ガチフロ点眼液0.3%
- クラビット点眼液0.5%
- レボフロキサシン点眼液0.5%「各社」
- クラビット点眼液1.5%
- レボフロキサシン点眼液1.5%「各社」
- コリナコール点眼液
- タリビッド点眼液0.3%
- オフサロン点眼液
- オフテクター点眼液0.3%
- オフロキシン点眼液0.3%
- オフロキサシンゲル化点眼液0.3%「わかもと」
- オフロキサシン点眼液0.3%「各社」
- タリビッド眼軟膏0.3%
- オフロキシン眼軟膏0.3%
- バクシダール点眼液0.3%
- ノフロ点眼液0.3%
- ビスコレット点眼液0.3%
- マリオットン点眼液0.3%
- ミタトニン点眼液0.3%
- ノルフロキサシン点眼液0.3%「各社」
- ベガモックス点眼液0.5%
- モキシフロキサシン点眼液0.5%「各社」
- ベストロン点眼用0.5%
- ロメフロン点眼液0.3%
- ロメフロンミニムス眼科耳科用液0.3%
手術4日前から使用するように指示されていることが多いですね。
まとめ
検査前、処置、手術前に使用する薬剤の院外処方についての考え方をまとめてみました。
いずれも院内で実施される行為に関連して使用される薬剤ということで、本来であれば院内で使用される薬剤です。
技術料の一部として、もしくは薬剤料のみ院内で請求という形が基本となっています。
ですが院外処方箋は完全に禁止というわけではなく、医療機関では処方せん料、薬局では薬剤料以外の点数を算定しなければ対応可能です。
ただ、通常の処方と一緒に記載され、コメント等が書かれていないと気づけないこともあるので注意が必要です。
大腸内視鏡検査前のラキソベロン内用液や眼科手術前のクラビット点眼液などは通常の処方と一緒に記載されていると、便秘や結膜炎への使用と思ってしまうかもしれません。
そのまま請求してしまい返戻ということがないように確実に患者から聞き取りを行い、怪しいと思った場合は疑義照会を徹底しないといけませんね。
参考資料
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示) 令和2年 厚生労働省告示第57号
- 保険薬局ニュース 広島県薬剤師会保険薬局部会 Vol.20(6),1-2,2012