令和8年8月17日、新規後発医薬品が承認されました。
今回、承認された後発品は早ければ令和8年12月に薬価収載される予定です。
令和8年度薬価制度改革により、令和8年10月以降に薬価収載されるAG(もしくはバイオAG)は先発品(バイオ先行品)と同じ薬価になるルールが追加されました。
そのため、もうAGが承認されることはないだろう・・・と思っていたのですが、蓋を開けてみるといくつかAGが!
- トルバプタンOD錠30mg「オーツカ」
ジクロフェナクNaテープ75mgZI「久光」(R8.8.19:AGの当否は非開示に)




トルバプタン(サムスカ)はすでにAGとして収載されているものの規格追加ではありますが、ジクロフェナクNaテープ75mgZI(ジクトルテープ)は初収載になるはず・・・。
また、第一三共エスファは承認取得済みだったアビラテロン酢酸エステル錠500mg「DSEP」を12月発売予定と発表しました。
しかも、トルバプタンOD錠30mg「オーツカ」とアビラテロン酢酸エステル錠500mg「DSEP」については製造販売元が堂々とAGと宣言しています。
V₂-受容体拮抗剤 トルバプタンOD錠30mg「オーツカ」製造販売承認を取得|大塚製薬工場
2026年12月発売予定製品のご案内(アビラテロン酢酸エステル錠500mg「DSEP」製品写真)|第一三共エスファ
規格違いなら大丈夫?ジクトルの場合、すでにボルタレンテープの後発品が収載されているけど、そこは関係する・・・?
よく考えたら、AGの薬価算定ルールについて詳しく調べてなかったな・・・と思ったので、調べることにしました。
かなりマニアックな内容ですが、気になる方は読んでみてください。
オーソライズド・ジェネリックの薬価算定ルール
令和8年度薬価制度改革により、新規収載されるオーソライズド・ジェネリック(AG)とバイオAGの薬価は先発品(バイオ先行品)と同じ薬価になるルールが追加されました。
19_令和8年度薬価制度改革の概要(令和8年度診療報酬改定説明資料等について)より
薬価制度改革の骨子
① バイオ AG の新規収載時の対応【基準改正】
- 先行品と有効成分、原薬、添加物、製法等が同一のバイオ医薬品であって、後発品として薬事承認を受けたもの(バイオ AG)(今後新たに薬価収載される品目※に限る)の薬価は、バイオ後続品(いわゆるバイオシミラー)との適切な競争環境を形成・維持する観点から、バイオ先行品の薬価と同額とすることとする。
② オーソライズド・ジェネリック(AG)の新規収載時の対応
- 後発品の適切な競争環境の形成・維持のため、先発品メーカーの許諾を受けて製造販売されるものであるオーソライズド・ジェネリック(AG)について、まずは、先発品と有効成分、原薬、添加物、製法等が同一の後発品(今後新たに薬価収載される品目※に限る)の薬価は、先発品の薬価と同額とすることとする。【基準改正】
- AG であるか否かを客観的に判断することが困難であることから、AGの把握方法については引き続き検討が必要であるため、薬価基準収載希望書に AG であるか否かを記載することを製造販売業者に求めることとする。【その他(通知改正)】
※ 令和8年10月以降に薬価収載される品目
まあ、令和8年10月以降に薬価収載されたAG・バイオAGの薬価は先発品・バイオ先行品と同じになるんだなってことはわかります。
ただ、今回のトルバプタン(サムスカ)とアビラテロン(ザイティガ)のように、すでにAGが収載されているけど、全ての規格が収載されていたわけではなくて、令和8年10月以降にAGに新たな規格が追加されるパターンは考えてもみませんでした。
よくよく考えたら制度上、このルールがどのように記載されているのかしっかり読んでなかったなと思ったので、改めて読んでみることにしました。
AGとバイオAGの定義
薬価算定の基準について(令和8年2月13日保発0213第3号)
どこに書いているのかさっぱりわからない・・・だったんですが、よく読んだらありました。
第2部 新規後発品の薬価算定
1 新規後発品として薬価収載された既収載品(先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品を除く。)の中に、新規後発品の最類似薬がない場合
イ 薬価算定の原則
新薬として薬価収載された既収載品中の当該新規後発品の最類似薬を比較薬として、類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額(共同開発その他の理由により、組成及び剤形区分が同一の最類似薬が複数となる場合には、それぞれについて類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額を当該最類似薬の年間販売量で加重平均した額)に 100 分の 50 を乗じて得た額を当該新規後発品の薬価とする。ただし、投与形態が内用であって、当該新規後発品及び同時期の薬価収載が予定される組成、剤形区分及び規格が当該新規後発品と同一の後発品(効能又は効果が当該新規後発品と類似しているものに限り、組成、剤形及び製法が新薬として薬価収載された既収載品と同一の後発品(令和8年 10 月以降に薬価収載されたものに限る。以下「先発品と同一の後発品」という。)を除く。)の品目数が7を超える場合は、100 分の 40 を乗じて得た額を当該新規後発品の薬価とする。ロ バイオ後続品に係る特例
イに関わらず、当該新規後発品がバイオ後続品である場合は、新薬として薬価収載された既収載品中の当該新規後発品の最類似薬を比較薬として、類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額(共同開発その他の理由により、組成及び剤形区分が同一の最類似薬が複数となる場合には、それぞれについて類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額を当該最類似薬の年間販売量で加重平均した額)に 100 分の 70 を乗じて得た額(ただし、投与形態が内用であって、当該新規後発品及び同時期の薬価収載が予定される組成、剤形区分及び規格が当該新規後発品と同一の後発品(効能又は効果が当該新規後発品と類似しているものに限り、組成が新薬として薬価収載された既収載品と同一のバイオ医薬品である後発品(令和8年 10 月以降に薬価収載されたものに限る。以下「先発品と同一のバイオ後発品」という。)を除く。)の品目数が 10 を超える場合は、100 分の 60 を乗じて得た額)に、当該バイオ後続品の製造販売業者が承認を申請するに当たって患者を対象に実施した臨床試験の充実度に応じて、当該額に 100 分の 10 を上限とする割合を乗じて得た額を加えた額を当該新規後発品の薬価とする。
- 令和8年 10 月以降に薬価収載されたAG=「先発品と同一の後発品」
- 令和8年 10 月以降に薬価収載されたバイオAG=「先発品と同一のバイオ後発品」
と定義づけられています。
あくまでも、令和8年 10 月以降に薬価収載されたものという条件がついているのが、資料を理解する上でのポイントです。
先発品と同一の後発品(AG)と先発品と同一のバイオ後発品(バイオAG)の薬価算定ルール
定義が見つかれば、算定ルールもすぐ見つかりました。
薬価算定の基準について(令和8年2月13日保発0213第3号)
3 先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品の薬価算定
イ 先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品の特例1及び2の規定に関わらず、先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品(新規後発品として薬価収載された既収載品(1 及び2の規定により薬価算定されたものに限る。)の中に、組成、剤形区分及び製造販売業者が当該新規後発品と同一の類似薬があるものを除く。)については、新薬として薬価収載された既収載品の中の当該新規後発品の最類似薬を比較薬として、類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額を当該新規後発品の薬価とする。
先発品と同一の後発品(R8.10月以降に薬価収載されるAG)と先発品と同一のバイオ後発品(R8.10月以降に薬価収載されるバイオAG)については、
「新薬として薬価収載された既収載品の中の当該新規後発品の最類似薬を比較薬として、類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額を当該新規後発品の薬価とする。」
なんのこっちゃ・・・ですね。
なんでこんなわかりにくい書き方をするんだ😅ですね。
ポイントはこれです。
「新薬として薬価収載された既収載品の中の当該新規後発品の最類似薬」
これが一番わかりにくと思うのですが、要はAG(バイオAG)の先発品(バイオ先行品)を意味しています。
つまり、AG(バイオAG)の薬価は先発品(バイオ先行品)を最類似薬として、類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定されると記載されています。
類似薬効比較方式(Ⅰ)で最類似薬が先発品(バイオ先行品)、加算なし、1日用量同じ(後発品・バイオ後続品なので)なら、先発品・バイオ先行品の薬価と同じになりますね。
なんでこんな回りくどい書き方なのかとは思いますが、よくみると、通常の後発品も類似薬効比較方式(Ⅰ)を基本として書かれてますね(類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額に 100 分の 50を乗じて得た額 等)。
同じ薬価といえば済むだろうに、制度上、そうは書けないんだと思います。


令和8年10月以降に薬価収載されるAG(バイオAG)の薬価算定の例外
まず、太字で示す部分です。
AG(バイオAG)の薬価が先発品(バイオ先行品)と同じになる根拠はわかりましたが、それだけだと、今回収載されたトルバプタン(サムスカ)とアビラテロン(ザイティガ)がどうなるかがいまいちわかりません。
先ほどの資料をもう一度見てみましょう。
薬価算定の基準について(令和8年2月13日保発0213第3号)
第2部 新規後発品の薬価算定
3 先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品の薬価算定
イ 先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品の特例1及び2の規定に関わらず、先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品(新規後発品として薬価収載された既収載品(1 及び2の規定により薬価算定されたものに限る。)の中に、組成、剤形区分及び製造販売業者が当該新規後発品と同一の類似薬があるものを除く。)については、新薬として薬価収載された既収載品の中の当該新規後発品の最類似薬を比較薬として、類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額を当該新規後発品の薬価とする。
オレンジのマーカーをつけた部分
「新規後発品として薬価収載された既収載品の中に、組成、剤形区分及び製造販売業者が当該新規後発品と同一の類似薬があるものを除く」
これにより、トルバプタンOD錠30mg「オーツカ」(サムスカAG)とアビラテロン酢酸エステル錠500mg「DSEP」(ザイティガAG)はAG薬価算定の例外に該当することがわかります。
トルバプタンOD錠30mg「オーツカ」は、
3.75mg/7.5mg/15mgが既収載なので、組成・剤形区分・製造販売業者が同一の類似薬がある状態です。
アビラテロン酢酸エステル錠500mg「DSEP」についても同様で、
250mgが既収載なので、組成・剤形区分・製造販売業者が同一の類似薬がある状態です。
この場合の薬価の算定方法が以下のように記載されています。
第2部 新規後発品の薬価算定
2 新規後発品として薬価収載された既収載品(先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品を除く。)の中に、新規後発品の最類似薬がある場合
(2)新規後発品として薬価収載された既収載品(先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品を除く。)の中に、組成、剤形区分及び規格が新規後発品と同一の類似薬がない場合
イ 薬価算定の原則
当該新規後発品の最類似薬(先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品を除く。)と有効成分の含有量が同一の規格があるものとして、類似薬効比較方式(Ⅰ)によって算定される額を算定値とし、当該算定値から規格間調整により算定される額を当該新規後発品の薬価とする。
なお、当該最類似薬が複数となる場合には一日薬価が最も低い額のもの(製造販売業者が同一の類似薬がある場合には、当該類似薬のうち薬価が最も低い額のもの)を比較薬とする。
ここも少しわかりにくいので補足すると
- 新規後発品として薬価収載された既収載品(先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品を除く)=R8.10以降に薬価収載されたAGやバイオAGを除く収載済みの後発品
- 組成、剤形区分及び規格が新規後発品と同一の類似薬がない場合=トルバプタンの30mgとアビラテロン酢酸エステルの500mgはいずれも各社未収載
ということで、すでにAGが薬価収載されているもので、10月以降に新たな規格が収載される場合は、それがAGだとしても、これまでどおりのルールに従い、規格間調整で薬価を算定するということになりますね。
これで、トルバプタンOD錠30mg「オーツカ」、アビラテロン酢酸エステル錠500mg「DSEP」は令和8年10月以降に収載されるAGでも先発品と同一の薬価になることはないとわかりましたが、ジクロフェナクNaテープ75mgZI「久光」については謎のままですね・・・。
ちなみに規格間調整については以下の記事で解説しているので、気になる方は読んでみてください。




先発品と同一の後発品・先発品と同一のバイオ後発品の薬価改定
R8.10以降に薬価収載されたAG(バイオAG)は先発品(バイオ先行品)と同じ薬価になります。
では、その医薬品が薬価改定を受けるときはどうなるのでしょうか?
先発品の薬価改定と同じ額になるのでしょうか?
当たってるけど少し違います。
第7節 後発品等の価格帯
3 先発品と同一の後発品及び先発品と同一のバイオ後発品の価格帯の特例
1及び2の規定に関わらず、次の各号のいずれかに該当する既収載品については、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に規定する額に改定する。
- イ 組成、剤形区分及び規格が同一である全ての類似薬(バイオ医薬品の場合は、組成及び規格が同一である全ての類似薬)のうち、第2章第2部3のイの規定により薬価算定された既収載の後発品及び新薬として薬価収載された既収載品の中の当該既収載の後発品の最類似薬
本号に掲げる既収載品の本規定の適用前の価格の加重平均値- ロ 第2章第2部3のロ又ハの規定により薬価算定された既収載の後発品
次により算定される額のうち、いずれか低い額
- (イ) 組成、剤形区分及び製造販売業者が当該既収載の後発品と同一の既収載の後発品(第2章第2部3のイの規定により薬価算定されたものに限る。)のイの規定の適用後の価格に、当該同一の既収載の後発品の薬価改定前の薬価に対する当該既収載の後発品の薬価改定前の薬価の比率と同等の比率を乗じて得た額
- (ロ) (イ)を適用しなかった場合の薬価改定後の額
この文章もかなりわかりにくいのですが、
- 第2章第2部3のイの規定により薬価算定された既収載の後発品=AG(バイオAG)
- 新薬として薬価収載された既収載品の中の当該既収載の後発品の最類似薬=AGの先発品に該当する薬
は「本規定の適用前の価格の加重平均値」、つまり同一価格帯に集約するというルールです。
R8.10以降に薬価収載されたAG(バイオAG)は先発品(バイオ先行品)は薬価改定後も同じ価格になりますが、改定後の薬価は両者の価格を加重平均することで算出されます。
おまけ:ジクトルテープAGの謎
日刊薬業さんに気になる記事がありました。


途中までしか読めないので、想像でしかありませんが、久光製薬さんは久光ファーマの「ジクロフェナクNaテープ75mgZI『久光』」を自社のAGとして認めたという内容が続くと想像できます(逆の可能性もありますが)。
長期収載品の選定療養の対象となることを回避?
記事のサブタイトルに「選定療養など「環境変化への対応」」とあります。
今回の記事でも紹介したように、R8.10以降に収載されるAGは「先発品と同一の後発品」と定義されており、あくまでも「後発品」です。
これが長期収載品の選定療養にも適用されるのであれば、AGが薬価収載されることで、ジクトルテープ75mg(先発品=長期収載品)は同額の後発品が収載される形になり、本来であれば長期収載品の選定療養の対象になる場合(他社が後発品を発売して置き換え率が50%を超えたり、後発品収載後5年経過)になっても、長期収載品の選定療養の対象から除外されることになります。
ただ、AGとはいえわざわざ新製品を作ってまで、その戦略を取る意味があるのか?
モーラスの場合は、長期収載品の選定療養ができるまで、置き換えが進みにくかったという背景がありましたが、ジクトルテープはどうでしょう?
後発品が存在しないのでわかりませんが、他社が作った場合、使用感が損なわれるような特殊な工夫が施されているのか?
ちょっとモヤモヤするところはありますが、現時点ではこれはジクトルAGが承認された意味ではないかと想像しています。
この戦略であるならば、12月に収載を行わずとも、いつもで収載できる意思を示した(承認を取得した)だけで意味があるのかもしれませんね。
薬価引き下げを軽減しつつ値下げ戦略を可能にする?
もうひとつAGを作るメリットは、薬価改定のルールです。
先発品とAGを販売することになれば、薬価は同じでも一方の値引きを行うことで、販売を拡大することが可能です。
本来であれば値引きし過ぎると薬価改定で大幅な薬価引き下げになってしまいますが、もう一方の価格と加重平均を行うルールのおかげで、大幅な薬価引き下げにはならない・・・ということが期待できるのかもしれません。
いずれにせよ、もやもやが増えるばかりですが、各社、いろんな戦略を考えているってことなんでしょうね。
AGであるかどうかも曖昧な形に・・・
翌日(R8.8.19)、AGの当否を非開示とする方針が示されました・・・。


方針の変更だったのか、そもそもAGであること認めたと言うのが間違いだったのか、それとも取材を受けた人の先走りだったのか・・・。




コメント