Q:ロスバスタチンとフェブキソスタットの併用には注意が必要ですか?

薬の疑問

A:注意は必要ですが通常時と同様の対応で問題ないと思います。

ロスバスタチン(先発医薬品名:クレストール)の添付文書にフェブキソスタット(先発医薬品名:フェブリク)との併用注意の記載が追加されました。
併用されているケースが珍しくない薬剤であるため、気になっている方も多いと思いますが、個人的には必ず併用を避けないといけないようなものではなく、併用していない際と同様に副作用のモニタリングを行うことで対処できるのではないかと考えます。

2022年8月22日の添付文書改訂(ロスバスタチンとフェブキソスタットの併用注意)

10 相互作用
10.2 併用注意

臨床症状・措置方法
本剤とフェブキソスタットを併用したとき、本剤のAUCが約1.9倍、Cmaxが約2.1倍上昇したとの報告がある。

機序・危険因子
フェブキソスタットがBCRPの機能を阻害することにより、本剤の血中濃度が増加する可能性がある。

クレストール錠2.5mg/錠5mg/OD錠2.5mg/OD錠5mg 添付文書

ロスバスタチンはBCRP(Breast Cancer Resistance Protein:乳癌耐性蛋白)の基質であることが知られており、フェブキソスタットについてはin vitroでBCRPを阻害することが知られています。

AUCが1.9倍、Cmaxが2.1倍となることから用量依存的に発生する副作用についての注意が必要ではあると思いますが、この数値がどのような条件で出されたものなのかが気になります。

改訂が行われた理由

電子添文改訂のお知らせには以下のように改訂理由が記載されています。

<改訂理由>
Lehtisalo1)らの文献で、本剤とフェブキソスタットとの併用によりAUCが1.9倍、Cmaxが2.1倍上昇することが報告されたことから、CCDS2)の相互作用の項に「フェブキソスタット」が追加されました。本邦においても、フェブキソスタットがBCRPの機能を阻害することにより、本剤の血中濃度が増加する可能性がある旨注意喚起すべきと判断し、併用注意に追記しました。

クレストール錠2.5mg/5mg/OD錠2.5mg/5mg 電子添文改訂のお知らせ アストラゼネカ株式会社

改訂の根拠となった論文

電子添文改訂のお知らせに記載されているLehtisalo1)らの文献です。

Lehtisalo M, et al. Febuxostat, But Not Allopurinol, Markedly Raises the Plasma Concentrations of the Breast Cancer Resistance Protein Substrate Rosuvastatin. Clin Transl Sci. 2020;13:1236-1243.

Abstract(概要)を参照します。

Abstract
Xanthine oxidase inhibitors febuxostat and allopurinol are commonly used in the treatment of gout. Febuxostat inhibits the breast cancer resistance protein (BCRP) in vitro. Rosuvastatin is a BCRP substrate and genetic variability in BCRP markedly affects rosuvastatin pharmacokinetics. In this study, we investigated possible effects of febuxostat and allopurinol on rosuvastatin pharmacokinetics. In a randomized crossover study with 3 phases, 10 healthy volunteers ingested once daily placebo for 7 days, 300 mg allopurinol for 7 days, or placebo for 3 days, followed by 120 mg febuxostat for 4 days, and a single 10 mg dose of rosuvastatin on day 6. Febuxostat increased the peak plasma concentration and area under the plasma concentration‐time curve of rosuvastatin 2.1‐fold (90% confidence interval 1.8–2.6; P = 5 × 10−5) and 1.9‐fold (1.5–2.5; P = 0.001), but had no effect on rosuvastatin half‐life or renal clearance.Allopurinol, on the other hand, did not affect rosuvastatin pharmacokinetics. In vitro, febuxostat inhibited the ATP‐dependent uptake of rosuvastatin into BCRP‐overexpressing membrane vesicles with a half‐maximal inhibitory concentration of 0.35 µM, whereas allopurinol showed no inhibition with concentrations up to 200 µM. Taken together, the results suggest that febuxostat increases rosuvastatin exposure by inhibiting its BCRP‐mediated efflux in the small intestine. Febuxostat may, therefore, serve as a useful index inhibitor of BCRP in drug‐drug interaction studies in humans. Moreover, concomitant use of febuxostat may increase the exposure to BCRP substrate drugs and, thus, the risk of dose‐dependent adverse effects.

Lehtisalo M, et al. Clin Transl Sci. 2020;13:1236-1243.

気になる部分(下線部)を訳してみます。

3相の無作為クロスオーバー試験において、健康なボランティア10名に1日1回プラセボを7日間、アロプリノール300mgを7日間、またはプラセボを3日間摂取させ、その後フェブキソスタット120mgを4日間、そして6日目にロスバスタチン10mgを単回投与した。フェブキソスタットは、ロスバスタチンの血漿中ピーク濃度を2.1倍(90%信頼区間1.8-2.6、P = 5×10-5)、血漿中濃度時間曲線下面積を1.9倍(1.5-2.5、P = 0.001)増加したが、ロスバスタチン半減期および腎クリアランスに影響は与えなかった。

Lehtisalo M, et al. Clin Transl Sci. 2020;13:1236-1243.

論文を元にどう考えるか?

「10名に対する試験、フェブキソスタットの投与量は120mg」と言うことなので、日本国内で使用されるフェブキソスタットの用量(20mgが多い)を考えると実際にはそこまでの影響はないのかなと考えます。
仮に影響があったとしても、効果の増大には大きな問題はなく、むしろ「the lower, the better」と言われるように、急性冠症候群(ACS)を含めた心血管イベントリスク予防ではLDL-Cは低ければ低い方が良いとされています。(Boekholdt SM et al. J Am Coll Cardiol 2014; 64: 485-494.

用量依存的な副作用(肝障害、ミオパチー等)に対する注意は必要ですが、これらは併用に関わらず通常じもチェックされていると思いますので、これまで通りの副作用モニタリングを行うことで対応できるのではないかと考えています。
併用時や増量時に意識を向けることは大切ですね。

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