令和8年7月14日、厚生労働省の医薬局医薬安全対策課は、使用上の注意の改訂指示を公開しました。
「使用上の注意」の改訂について(医薬安発0714第1号 令和8年7月14日)
「使用上の注意」の改訂について(医薬安発0714第1号 令和8年7月14日)
今回の指示には、プロトンポンプインヒビター(PPI:Proton Pump Inhibitor)を含有製剤やインスリン アスパルトのうち超速効型・バイアル製剤であるフィアスプ注100単位/mL、免疫チェックポイント阻害薬(ベムロリズマブ=キイトルーダは除く)等が含まれ、それぞれの添付文書(電子添文)の改訂が行われています。
ぺん蔵他の改訂もあったけど、この記事では特に気になったこの3つを中心にまとめています。
PPIによる低マグネシウム血症
低マグネシウム血症関連事象の評価が行われ、PPI含有製剤との因果関係が否定できない症例が集積していることを踏まえて、使用上の注意(「重要な基本的注意」と「重大な副作用」)を改訂することが適切という結論に至ったようです。
ちなみに、医療用医薬品だけでなく、要指導医薬品としてのPPIについても使用上の注意の改訂(「相談すること」の項に「低マグネシウム血症」を追記)が行われます。



少し前に、スイッチOTCとしてオメプラールS、タケプロンs、パリエットSが発売されましたね。
改訂指示の対象となる製品と国内症例の集積状況
対象となる製品と国内症例の集積状況をまとめます(すべて死亡例はなし)。
プロトンポンプインヒビター含有製剤(医療用)の「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
症例数は、医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例(MedDRA PT「低マグネシウム血症、血中マグネシウム減少、マグネシウム欠乏」で当局報告された症例)で、CTCAE(ver.6.0)におけるGrade3 以上の症例かつプロトンポンプインヒビター中止後に複数点での血中マグネシウム値が測定されている症例を抽出しています。
- オメプラゾール(オメプラール錠、オメプラゾン錠 等):1例(うち、因果関係が否定できない症例なし)
- オメプラゾールナトリウム(オメプラゾール注射用):0例
- ラベプラゾールナトリウム(パリエット錠 等):3例(うち、因果関係が否定できない症例2例)
- ランソプラゾール(タケプロンカプセル/OD錠/静注用 等):6例(うち、因果関係が否定できない症例5例)
- エソメプラゾールマグネシウム水和物(ネキシウムカプセル/懸濁用顆粒分包 等):12例(うち、因果関係が否定できない症例5例)
- ボノプラザンフマル酸塩(タケキャブ錠/OD錠):17例(うち、因果関係が否定できない症例8例)
- アスピリン・ランソプラゾール配合剤(タケルダ配合錠):集積状況未確認
- アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩配合剤(キャブピリン配合錠):集積状況未確認
- ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン(ボノサップパック):集積状況未確認
- ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール(ボノピオンパック):集積状況未確認
注:いずれについても死亡例の報告はないため省略



ランサップ/ランピオン、ラベキュア/ラベファインはもういない・・・
使用上の注意の改訂内容
医療用医薬品については、「8. 重要な基本的注意」と「11.1 重大な副作用」に以下の内容が追加されています。
- 重要な基本的注意
①の長期投与により低マグネシウム血症があらわれることがあるので、②を長期投与する際は、定期的に血中マグネシウム濃度を測定すること。
- 副作用
11.1 重大な副作用
低マグネシウム血症
①の長期投与により、QT延長、痙攣、しびれ等を伴う低マグネシウム血症があらわれることがある。また、低マグネシウム血症に起因した低カルシウム血症、低カリウム血症等の電解質異常を伴う場合がある。これらの電解質異常が疑われる症状があらわれた場合には、血中マグネシウム濃度の測定を行い、異常が認められた場合は、マグネシウムの補充等の適切な処置を行うこと。
- エソメプラゾールマグネシウム水和物、オメプラゾール、ボノプラザンフマル酸塩、ラベプラゾールナトリウム、ランソプラゾール(経口剤):①・② = 本剤
- オメプラゾールナトリウム、ランソプラゾール(注射剤):①・② = プロトンポンプインヒビター
- アスピリン・ボノプラザンフマル酸塩:① = ボノプラザン、② = 本剤
- アスピリン・ランソプラゾール:① = ランソプラゾール、② = 本剤
- ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール:①・② = プロトンポンプインヒビター
要指導医薬品については、相談すること(まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。)に以下の内容が追加されています。
症状の名称 症状 低マグネシウム血症 吐き気、嘔吐、食欲不振、体がだるい、顔や手足の筋肉がぴくつく、一時的にボーっとする、意識の低下、手足の筋肉が硬直しガクガクと震える、しびれ、めまい、動悸、気を失う等があらわれる。
フィアスプ注100単位/mL:37℃を超える高温環境下でのゲル化
フィアスプ注をインスリンポンプで使用した際、注射液にゲル化が発生することについては、2022年ごろから注意喚起が行われてきました。
実際に、ゲル化によりポンプ内部に閉塞が生じた結果、適切な投与を行うことができず、重篤な高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスに至った症例が報告されていることを踏まえ、使用上の注意を改訂(「重要な基本的注意」)することが適切という結論に至ったようです。
インスリン アスパルト(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
使用上の注意の改訂内容
フィアスプ注100単位/mLの添文「8. 重要な基本的注意」に以下の内容が追加されています。
- 重要な基本的注意
本剤は37℃を超える高温でゲル化するおそれがある。ポータブルインスリン用輸液ポンプを用いる場合、高温下ではゲル化によりインスリンポンプの内部に閉塞が生じ、本剤が適切に投与されないことによる重篤な高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス等が発現することがあるため、以下の点に注意するよう患者に指導すること。
・37℃を超える高温環境下を避けて使用すること。
・インスリンポンプの内部を確認し、注射液の外観に変化がみられた場合は使用しないこと。フィアスプ注100単位/mL 添付文書
1型糖尿病の患者さんにとって、インスリンポンプを用いた持続皮下インスリン注入療法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)は毎日の負担を軽減しつつ、より適切な血糖コントロールの維持に欠かせないものです。
そのためにも、ゲル化に対する注意喚起が重要になりますね。
夏に37℃を超す日は珍しくなくなりました。
炎天下や高温になる空間での行動が多い場合には、特に注意が必要です。
冬であっても、こたつやストーブ、カイロ等でポンプが長時間温める形になるとゲル化のリスクが増すため注意が必要です。
ノボ ノルディスクはホームページで患者さん向けの案内を公開しています。
2026年7月14日:フィアスプ®注をインスリンポンプでご使用中の患者さん・ご家族の方へ
フィアスプ以外のゲル化は?
CSIIには超速効型インスリンが用いられますが、フィアスプ以外の超速効型インスリン(ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラ、ルムジェブなど)においても、注入に影響を与えるゲル化や結晶化の報告はあります。
- 取扱い上の注意
20.3 ポータブルインスリン用輸液ポンプを使用する際は、注入セット(シリンジやチューブ等)及びシリンジ内の本剤を48時間以内に交換すること。アピドラ注100単位/mL 添付文書
- 取扱い上の注意
20.4 ポリエチレン製又はポリオレフィン製のチューブとポリプロピレン製のリザーバーを用いた持続皮下注入ポンプ内において本剤は9日間安定であった。ルムジェブ注100単位/mL 添付文書



何らかの理由で、インスリンポンプが詰まったり、流入が悪くなることは、常に想定されていることではあるけど、フィアスプについては温度によるゲル化が起こりやすいってことだと理解しています。
これまでの経緯
この件に関して、ノボ ノルディスクファーマは、2022年から注意喚起を行ってきました。
2022年3月30日:フィアスプ®注 インスリンポンプでの適正使用のお願い
ペンフィルから注射液を抜き取ってインスリンポンプに充填、使用していた患者さんで、ゲル化による重篤な高血糖が報告されたことを受けて出された案内です。
バイアル製剤でもゲル化の報告が8例(高血糖等の有害事象はなし)あったと記載されています。
この時点では、ゲル化の原因については言及されておらず、まだ調査中だったものと思われます。
インスリンポンプの内部を定期的に(ゲル化がないか)確認し、外観に変化(付着物、浮遊物、塊、薄片など)が見られた場合は、ポンプの部品(リザーバーまたはチューブ)を交換し、バイアル製剤も新しいものに交換するよう指導することが求められています。
ポンプシステムが適切に作動しない場合に備えて、ペン型インスリン注入器製剤等を常に携帯するよう指導することも求められています。
また、ペンフィル(カートリッジ製剤)やフレックスタッチ(ペン型注入器製剤)から薬液をシリンジで抜き取って使用することは行わないよう注意喚起されています。
2023年2月17日:フィアスプ®注 インスリンポンプでの適正使用のお願い(続報)
約1年後、最初の注意喚起以降もゲル化の報告が2例(非重篤な高血糖の発現あり)あったことを受けて、続報が公開されています。
物理安定性試験の結果から、温度の上昇や機械的振動に相当するストレスが加わった際にゲル化が生じる可能性があると記載されています。
2026年6月12日:インスリンポンプでの適正使用のお願い(続報)
つい先日、公開された案内です。
2023年1月〜2026年5月31日の期間で、フィアスプ ®注バイアル製剤の注射液のゲル化による影響が疑われる副作用事例が国内で 7例(糖尿病ケトアシドーシス (重篤)2例、 高血糖(重篤)1例、高血糖(非重篤)4例) 報告されていることが記載されています。
ここで、主な原因は高温(37℃を超える高温)であると結論づけられる形になっています。



機械的振動も要因なんだろうけど、高温による影響の方が大きく、ポンプ充填後の使用期間内(6日間)であれば、主な要因は高温になるってことなんだろうね。
免疫チェックポイント阻害薬による血管炎
ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(キイトルーダ点滴静注)を除く免疫チェックポイント阻害薬(ICI:Immune Checkpoint Inhibitors)(抗PD-1抗体薬、抗PD-L1抗体薬、抗CTLA-4抗体薬)について、血管炎関連症例に関する評価を行ったところ、因果関係が否定できない症例が集積したことを踏まえて、使用上の注意(「重大な副作用」)を改訂することが適切という結論に至ったようです。



キイトルーダ以外となっていけど、キイトルーダについては、2025年7月30 日付で同様の指示が出されており、使用上の注意はすでに改訂済みです。
参考:「使用上の注意」の改訂について(医薬 安発0730第1号 令和7年7月30日)
改訂指示の対象となる製品と国内症例の集積状況
対象となる製品と国内症例の集積状況をまとめます(すべて死亡例はなし)。
抗 PD-1、抗 PD-L1 及び抗 CTLA-4 抗体薬※の「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
※:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)を除く、抗 PD-1、抗 PD-L1 及び抗 CTLA-4抗体薬
症例数は、医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された症例(MedDRA ver.28.1 SMQ 血管炎(狭域)(PT「リウマチ性多発筋痛」を除く)に該当する重度の症例のうち、生検、画像検査等の検査の結果について言及されている症例)元に数えたものです。
- ニボルマブ(オプジーボ点滴静注):22例(うち、因果関係が否定できない症例6例)
- セミプリマブ(リブタヨ点滴静注):0例
- チスレリズマブ(テビムプラ点滴静注):0例
- アベルマブ(バベンチオ点滴静注):1例(うち、因果関係が否定できない症例1例)
- アテゾリズマブ(テセントリク点滴静注):11例(うち、因果関係が否定できない症例6例)
- デュルバルマブ(イミフィンジ点滴静注):7例(うち、因果関係が否定できない症例3例)
- レチファンリマブ(ジニイズ点滴静注):0例
- イピリムマブ(ヤーボイ点滴静注):10例(うち、因果関係が否定できない症例2例)
- トレメリムマブ(イジュド点滴静注):4例(うち、因果関係が否定できない症例1例)
注1:成分名から「(遺伝子組み換え)」は省略
注2:いずれについても死亡例の報告はないため省略
使用上の注意の改訂内容
「11.1 重大な副作用」に以下の内容が追加されています。
- 副作用
11.1 重大な副作用
血管炎
大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎[抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、IgA 血管炎、皮膚血管炎を含む]があらわれることがある。



キイトルーダのものとほぼ同じだね!
- 副作用
11.1 重大な副作用
血管炎
大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎[抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎、IgA血管炎を含む]があらわれることがある。キイトルーダ点滴静注100mg 添付文書
そのほかの改訂内容
そのほかについては簡単にまとめます。
グセルクマブ(遺伝子組換え)による自己免疫性肝炎等の肝機能障害
グセルクマブ(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
グセルクマブ(遺伝子組換え)(トレムフィア皮下注/点滴静注)の使用上の注意に、以下の内容を追加するよう指示が出されています。
- 重要な基本的注意
自己免疫性肝炎等の肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。
- 副作用
11.1 重大な副作用
肝機能障害
自己免疫性肝炎等の肝機能障害があらわれることがある。
ドキソルビシン塩酸塩(リポソーム製剤)による腎臓限局型血栓性微小血管症
ドキソルビシン塩酸塩(リポソーム製剤)の「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
ドキソルビシン塩酸塩(ドキシル注)の使用上の注意に、以下の内容を追加するよう指示が出されています。
- 重要な基本的注意
腎臓限局型血栓性微小血管症があらわれることがあるので、定期的に血液検査、腎機能検査、尿検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。- 副作用
11.1 重大な副作用
腎臓限局型血栓性微小血管症
イキサゾミブクエン酸エステルによる血栓性微小血管症
イキサゾミブクエン酸エステルの「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
イキサゾミブクエン酸エステル(ニンラーロカプセル)の使用上の注意に、以下の内容を追加するよう指示が出されています。
- 副作用
11.1 重大な副作用
血栓性微小血管症
血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群等の血栓性微小血管症があらわれることがある。破砕赤血球を伴う貧血、血小板減少、腎機能障害等が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
カルボプラチンによる抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
カルボプラチンの「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
カルボプラチン(パラプラチン注射液)の使用上の注意に、以下の内容を追加するよう指示が出されています。
- 副作用
11.1 重大な副作用
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
SIADH:Syndrome of Inappropriate secretion of AntiDiuretic Hormone



SIADHといえばサムスカのイメージだね



現時点でAGを含める後発品にはSIADHの適応がないので、サムスカのみが持つ適応だよね。
ニボルマブ(遺伝子組換え)による血栓性微小血管症
ニボルマブ(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
ニボルマブ(遺伝子組換え)(オプジーボ点滴静注)の使用上の注意に、以下の内容を追加するよう指示が出されています。
- 副作用
11.1 重大な副作用
血栓性微小血管症
血栓性血小板減少性紫斑病等の血栓性微小血管症があらわれることがある。破砕赤血球を伴う貧血、血小板減少、腎機能障害等が認められた場合には、適切な処置を行うこと。
組換え RS ウイルスワクチンによるギラン・バレー症候群
組換え RS ウイルスワクチンの「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
組換え RS ウイルスワクチン(アブリスボ筋注用、アレックスビー筋注用)の使用上の注意に、以下の内容を追加するよう指示が出されています。
- 副反応
11.1 重大な副反応
ギラン・バレー症候群
四肢遠位から始まる弛緩性麻痺、腱反射の減弱ないし消失等の症状があらわれることがある。
抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンによる血栓性微小血管症
抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンの「使用上の注意」の改訂について(2026年7月14日 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン点滴静注用)の使用上の注意に、以下の内容を追加するよう指示が出されています。
- 副作用
11.1 重大な副作用
血栓性微小血管症
破砕赤血球を伴う貧血、血小板減少、腎機能障害等があらわれることがある。


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