令和8年7月15日、厚生労働省は「メチルフェニデート塩酸塩製剤(コンサータ錠 18mg、同錠 27mg 及び同錠 36mg)の薬局間譲渡・譲受に係る取扱いについて」を発出し、限定出荷により入手困難となっているコンサータ錠について、薬局間での譲渡・譲受を期間限定、特例的に可能とすることを発表しました。
コンサータの薬局間譲渡・譲受の特例措置
注意欠陥多動性障害(AD/HD:Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder)治療薬コンサータは、昨年9月(DSJP上では2025年9月ですが、実際は8月くらいからだったと思います)から限定出荷が継続している状況です。
当初は3ヶ月程度で解消される見込みと発表されていましたが、途中からその記載は消え、解除予定については未定の状況です。
出荷量については、少しずつ増加しているので、流通についても改善しているように見えますが、実際にはそうではなく、むしろ入荷が困難になっているという声が増えている印象があります。
やむを得ず、コンサータから別の薬剤に切り替えているケースもあると思うので、全体的に見れば需要は減っているのではないかと思うのですが、それでも十分ではないということは、実際の出荷量が少ない(現時点ではA:通常となっていますが)ということなのかもしれません。
このような状況下、一般社団法人 日本保険薬局協会(NPhA:Nippon Pharmacy Association)は、6月11日に「コンサータ錠の登録薬局間の在庫調整等に関する要望」を厚生労働省に提出しており、これが後押しになったのか、7月15日に、「メチルフェニデート塩酸塩製剤(コンサータ錠 18mg、同錠 27mg 及び同錠 36mg)の薬局間譲渡・譲受に係る取扱いについて」が発出されることになりました。
特例措置の内容
コンサータの薬局間譲渡・譲受の特例措置についてのポイントをまとめます。
(詳しくは通知本文を確認してください)
- 対象となるのはコンサータのみ(リタリンは対象外)
- ADHD適正流通管理システムに登録している薬局間においてのみ、譲渡・譲受を認める
- 譲渡・譲受を行う前に、相手方の薬局が登録薬局であることをそれぞれが確認する
- 譲渡を依頼する数量については、患者に対する調剤において当分必要な数量に限る
- 譲渡側・譲受側それぞれの薬局は、譲渡・譲受を行った日に、ADHD 適正流通管理システムを通じ、ADHD 適正流通管理システム事務局に当該譲渡・譲受に係る必要事項(規格、数量、相手方薬局の名称等)を報告する
- コンサータの譲渡・譲受を行った際、登録薬局は、帳簿に必要事項(品名、数量、年月日、相手方登録薬局の氏名又は名称及び住所)を記載する
- ヤンセンファーマ株式会社(コンサータの製造販売業者)又は ADHD 適正流通管理システム事務局から、コンサータの譲渡・譲受を行った薬局に対して、適正流通の観点から、上記の報告等の詳細について問い合わせる可能性がある
- 特例措置を終了する際は、改めて通知する
ポイントはいくつかあります。
譲渡・譲受が可能なのはADHD適正流通管理システム登録薬局のみ
まず、譲渡・譲受が可能なのはADHD適正流通管理システムに登録を行っている薬局のみとなっています。
譲渡側は、コンサータを在庫している時点で登録済(更新切れになっていない限り)だとは思いますが、譲受側が登録していない可能性はあるのかもしれません(それはかなり問題ではありますが・・・)。
ぺんぎん薬剤師そんなことはないとは思っても、きちんと確認することが重要ですね。
譲渡・譲受可能な数量
次に譲渡・譲受可能な数はその調剤で必要な数量ということなので、譲受側は処方内容を確認し、必要な数のみを依頼する必要があります。
ADHD適正流通管理システムは調剤時に調剤内容を報告する仕組みになっているので、そこと矛盾が生じる場合には、詳細の問い合わせが入ることになるのかもしれませんね。
また、通知には書かれていませんが、システム内には、1薬局が譲渡(出庫)可能なのは、1ヶ月につき各規格300錠までとなっています。
これは譲受側の数に関わらず合計300錠ということなので、A薬局に100錠、B薬局に200錠譲渡すれば、それでその月の上限になってしまいます。
この300錠という数字、何を根拠に定められたかはわかりませんが、元々、譲渡・譲受が禁止されていた薬剤を特例的に譲渡・譲受可能にしている以上、一定の制限が必要と考えたのではないかと思います。



本来であれば分譲できない医薬品ですから、無制限ってわけにはいかないと思います。少なくとも最初から無制限ってのは難しいでしょうね。
譲渡・譲受の報告
譲渡・譲受が行われた場合、譲渡側・譲受側それぞれの薬局が、譲渡・譲受を行った当日に、ADHD 適正流通管理システムを通じて必要事項(規格、数量、相手方薬局の名称等)を報告する必要があります。
この内容に不備がある場合は、ヤンセンや事務局から電話がかかってくるかもしれないってことですね。
ちなみに登録内容に修正がある場合は、システムで修正するのではなく、メールや電話での対応になるようです。
また、譲渡・譲受を行った際、登録薬局は、帳簿に必要事項(品名、数量、年月日、相手方登録薬局の氏名又は名称及び住所)を記載する必要があります。
これはコンサータが第一種向精神薬であることを考えれば当然ですね。
麻薬及び向精神薬取締法(昭和 28 年法律第 14 号)で定められている内容です。
特例措置の効果はどの程度期待できる?
今回の特例措置でコンサータの流通がどの程度改善するかと言われると・・・。
これだけでは、なかなか難しそうです。
特に薬局が少ない地域だと、特例措置ができても、譲渡・譲受できる相手が見つからないわけで、今回の特例措置ができても状況が変わらない可能性が高いです。
遠方の場合、やり取りをどうするのか?
現在登録薬局でなくても、過去の在庫が残っている場合等、積極的に譲渡できる仕組みがあってもいい気がします。
そういった面では実情に則した対応ではないという声も出そうですが、少なくとも大きな一歩であることは間違い無いです。
今回の特例措置については「特例措置を終了する際は、改めて通知する」と明確に記載されているので、コンサータが通常出荷になってしばらく経ったくらいに廃止されそうですね。
参考①:コンサータ錠の流通規制について
メチルフェニデートの規制に関して過去の経緯を簡単にまとめておきます。
中枢神経刺激薬であるメチルフェニデートはアンフェタミンに類似した作用を有していますが、2007年ごろに不適切処方等により薬物乱用が社会問題化しました。
当時、リタリンはうつ病の適応を有していましたが、安易な処方を回避し、ナルコレプシーに対する使用を維持することを目的に、2007年10月にうつ病の効能・効果が削除、ナルコレプシーの適応に限定されました。
また、承認申請中だったコンサータ(メチルフェニデート徐放製剤)は、小児AD/HDのみを適応として承認されることになりました。
また、コンサータ、リタリンそれぞれに流通管理システムが設けられ、登録を行った医療機関・薬局のみが処方・調剤・交付可能な形になりました。
リタリン流通管理委員会 事務局のホームページはまだ残っていますね・・・!
「塩酸メチルフェニデート製剤の使用にあたっての留意事項等について」(平成19年10月26日)
ちなみに、コンサータを薬局間で譲渡・譲受できない旨はこの通知に記載されています。
塩酸メチルフェニデート製剤の使用にあたっての留意事項について(平成19年10月26日)
3.薬局における調剤に関する周知事項について
(2)上記1 (3) ②のリストに掲載された薬局において、リタリン又はコンサータに係る処方せんを受けとった薬剤師は、調剤前に、処方せんを交付した医師及び発行先の医療機関が1 (3) ②のリストに掲載されているかどうか確認し、リストに掲載されていなければ調剤することを拒むこと。
なお、リタリン又はコンサータを薬局間で譲渡・譲受しないようにすること。
また、当時の流れについては「アポネットR研究会・最近の話題」様に詳しくまとめられています。
- リタリン流通管理基準(アポネットR研究会・最近の話題)
- 塩酸メチルフェニデート製剤の使用にあたっての留意事項(アポネットR研究会・最近の話題)
- リタリン、うつ病に関する適応症の削除が決まる(アポネットR研究会・最近の話題)
この流通規制により、うつを伴う成人AD/HDに対して使用できる薬剤(リタリン)がなくなってしまい、適切な治療を行えない患者さんが出てくるという問題があったのですが、平成24年にストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)が、平成25年12月にコンサータが、それぞれ18歳以上の成人期に対する適応拡大承認を取得することで解消しました。
その後、ビバンセ錠の発売に伴い、ADHD適正流通管理システムによる流通制限に移行した流れです。
「メチルフェニデート塩酸塩製剤(コンサータ錠 18mg、同錠 27mg 及び同錠 36mg)の使用にあたっての留意事項について」(令和元年9月4日)
コンサータ錠の供給不安
コンサータ錠の供給不安の経緯については、DSJPを見てもらうのが一番わかりやすいと思います。
それぞれの規格をクリックしてもらうと、これまでの供給状況の変化、それぞれのタイミングでヤンセンが公開している案内文書へのリンクを確認することができます。
(案内文書を確認するには、医療関係者としてヤンセンのホームページで会員登録を行う必要があります)


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