Q:新型コロナウイルス感染症に対してアセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬は使用できますか?

薬の疑問

A:ロキソプロフェンやイブプロフェン等のNSAIDsが使用可能です。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の流行初期にNSAIDsの使用は避けるべきという情報があったため、アセトアミノフェンが選択されることが多かったのですが、現在はNSAIDsを避けるべきという明確な根拠は存在しません。

SARS-CoV-2陽性患者に対してNSAIDsを使用した場合のリスク上昇についてのメタアナリシスが行われています。

Interpretation
Data suggests that NSAIDs such as ibuprofen, aspirin and COX-2 inhibitor, can be used safely among patients positive to SARS-CoV-2. However, for some of the analyses the number of studies were limited and the quality of evidence was overall low, therefore more research is needed to corroborate these findings.

Zhou, Qi, et al. “Use of non-steroidal anti-inflammatory drugs and adverse outcomes during the COVID-19 pandemic: A systematic review and meta-analysis.” EClinicalMedicine 46 (2022): 101373.

”イブプロフェン、アスピリン、COX-2阻害剤などのNSAIDsは、SARS-CoV-2陽性患者にも安全に使用できることが示唆された。しかし、いくつかの分析では、研究数が限られており、エビデンスの質も全体的に低いため、これらの知見を裏付けるためには、さらなる研究が必要である。”

ということで、現時点ではCOVID19に対してNSAIDsを避けるべきという明確な根拠は存在せず、症状に応じて使用することが可能と考えられます。

SARS-CoV-2陽性かどうかに関わらず、NSAIDsを使用する際には、年齢、腎機能障害・リスクの有無を考慮する必要があります。
その点については通常のNSAIDs使用と同様に注意が必要です。

COVID19にはNSAIDsを避けるべきという考え方が広まった経緯

新型コロナウイルス感染当初2020年3月14日にフランスの保健相のOlivier Véran氏(神経科医)のツイートをきっかけに、情報が拡大され広まった可能性があります。

翻訳すると"⚠️ #COVIDー19 |抗炎症薬(イブプロフェン、コルチゾン、 …)を服用すると、感染を悪化させる要因となる可能性があります。発熱の場合は、パラセタモールを服用してください。
すでに抗炎症薬を服用している場合、または疑わしい場合は、医師にアドバイスを求めてください。"という内容です。

それを受けてなのかWHOが下記のツイートを公開しています。(リプライ元の方です)
"WHOは、 #COVID19の人の発熱の治療に#ibuprofenを使用することへの懸念を認識しています。
私たちは患者を治療する医師と相談しており、特定の集団での使用を制限する通常の影響を超えて、悪影響の報告を認識していません。"

その後、下記の訂正ツイート(リプライの方)を行なっています。
"Q: #ibuprofenは#COVID19の人の病気を悪化させる可能性がありますか?
A:現在入手可能な情報に基づいて、WHOはイブプロフェンの使用を推奨していません。"
が、「イブプロフェン=使わない方がいい」というイメージが広まってしまいました。

↓は何故、誤解されたまま情報が広がってしまったかを考察している記事です。
とても興味深い考察で、医療に関わらず、様々な場面で注意しないといけないことだと思います。

新型コロナウイルス感染時のイブプロフェン服用、その安全性を巡る混乱はなぜ起きたのか?
新型コロナウイルス感染症による発熱の際に、解熱剤としてイブプロフェンを服用すべきなのか、そうではないのか。フランス保健省の通達をきっかけに世界を巡った情報はミスリードの可能性が高いと判明したが、いったいなぜ混乱が生じたのか?その過程を知ることは、わたしたちがニュースをどう消費するかを考える上で重要な教訓になる──。医療...

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