A:診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄に記載が必要な項目はありません。ですが、添付文書にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬の併用や患者背景に関する記載があります。
保険請求上の縛りはありませんが、添付文書上でいくつかの注意点が挙げられている薬剤です。
そのため、「効能又は効果に関連する注意」「臨床成績」の部分、「用法及び用量に関連する注意」の記述について留意するよう通知が出されています。
3 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について – 厚生労働省(保医発0524第3号 令和4年5月24日)
(2) ケレンディア錠10mg及び同錠20mg
① 本製剤の効能又は効果に関連する注意において、「アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンII受容体拮抗薬による治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に投与すること。」、「本剤投与によりeGFRが低下することがあることから、eGFRが25mL/min/1.73㎡未満の患者には、リスクとベネフィットを考慮した上で、本剤投与の適否を慎重に判断すること。」及び「「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能、アルブミン尿等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。
② 本製剤の用法及び用量に関連する注意において、「10mg錠と20mg錠の生物学的同等性は示されていないため、20mgを投与する際には10mg錠を使用しないこと。」とされているので、使用に当たっては十分留意すること。
患者背景や併用薬についての注意
以下の通り、4つに分けて注意事項が記載されています。
1つめ、2つめ、4つめが留意事項として指摘されています。
(3つめは留意事項に含まれてはいませんが大切な内容なので少し触れておきます)
4. 効能又は効果
リフヌア錠45mg 添付文書
2型糖尿病を合併する慢性腎臓病
ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。
5. 効能又は効果に関連する注意
5.1 アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬による治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に投与すること。
5.2 本剤投与によりeGFRが低下することがあることから、eGFRが25mL/min/1.73㎡未満の患者には、リスクとベネフィットを考慮した上で、本剤投与の適否を慎重に判断すること。
5.3 日本人部分集団では、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の腎複合エンドポイントにおいて、本剤のプラセボに対するハザード比は0.911であった一方で、国際共同第Ⅲ相試験(試験16244)の主要評価項目の構成要素の腎不全、及び国際共同第Ⅲ相試験(試験17530)の副次評価項目の腎複合エンドポイントにおいては、本剤のプラセボに対するハザード比が1を上回った。試験の対象となった全体集団と比べて日本人では本剤の腎不全への進展抑制効果が弱い可能性がある。
5.4 「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能、アルブミン尿等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること。
1つめ。
忍容性がない場合を除き、ARBかACE阻害薬による治療を受けている方に投与すること。
他のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA:Mineralocorticoid Receptor Antagonist)はARBやACE阻害薬が併用注意となっていますが、ケレンディアについては併用注意ではなく、併用するのが基本と位置付けられています。
2つめ。
一時的なeGFR低下を引き起こすことがあるため、eGFRが25mL/min/1.73㎡未満の患者に使用する場合は投与の適否を慎重に判断する必要がある。
3つめ。
これは直接の留意事項とされてはいませんが、留意事項とされている他の内容を強調するための根拠となっている気がします。
日本人部分集団ではハザード比が1を上回ってしまったため日本人においてはケレンディアの腎不全への進展抑制効果が弱い可能性がある。
現時点では日本人に対しては実際にケレンディアがどの程度効果を発揮するか不明な部分があります。
薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会でもこの部分が指摘を受け、1度目の審議では承認が了承されず、2回目の審議でようやく承認了承という形になりました。
ハザード比って何?という方は以下の記事を参照してみてください。
4つめ。
臨床試験に組み入れられた患者背景をしっかり理解して・・・とのことなので、該当部分を整理してみます。
17. 臨床成績
リフヌア錠45mg 添付文書
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.1.1 国際共同第Ⅲ相試験(試験16244、FIDELIO-DKD)
糖尿病性腎臓病と診断された患者※1[①尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)30mg/g以上300mg/g未満、推定糸球体ろ過量(eGFR)25mL/min/1.73㎡以上60mL/min/1.73㎡未満、かつ糖尿病性網膜症の病歴を有する、又は②UACR300mg/g以上5000mg/g以下、かつeGFR25mL/min/1.73㎡以上75mL/min/1.73㎡未満]5674例(日本人415例を含む)※2を対象に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を含む標準治療※3に上乗せした本剤(10mg1日1回又は20mg1日1回、増量又は減量可)の有効性及び安全性を検討する多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間、イベント主導型試験を実施した。
※1:非糖尿病性の腎臓病(IgA腎症、多発性嚢胞腎等)患者は本試験の対象から除外した。
※2:高血圧症合併例は5505例(97.0%)(日本人414例(99.8%))組み入れられた。
※3:アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が最大忍容量で投与されている患者を組み入れた。
17.1.2 国際共同第Ⅲ相試験(試験17530、FIGARO-DKD)
糖尿病性腎臓病と診断された患者※1[①尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)30mg/g以上300mg/g未満、かつ推定糸球体ろ過量(eGFR)25mL/min/1.73㎡以上90mL/min/1.73㎡以下、又は②UACR300mg/g以上5000mg/g以下、かつeGFR60mL/min/1.73㎡以上]7352例(日本人503例を含む)※2を対象に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を含む標準治療※3に上乗せした本剤(10mg1日1回又は20mg1日1回、増量又は減量可)の有効性及び安全性を検討する多施設共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、並行群間、イベント主導型試験を実施した。
※1:非糖尿病性の腎臓病(IgA腎症、多発性嚢胞腎等)患者は本試験の対象から除外した。
※2:高血圧症合併例は7061例(96.0%)(日本人496例(98.6%))組み入れられた。
※3:アンジオテンシン変換酵素阻害薬又はアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬が最大忍容量で投与されている患者を組み入れた。
いずれの臨床試験でも対象患者は以下のいずれかでした。
・30mg/g ≦ UACR < 300mg/g かつ 25mL/min/1.73㎡ ≦ eGFR < 60mL/min/1.73㎡
・300mg/g ≦ UACR < 5000mg/g かつ 60mL/min/1.73㎡ ≦ eGFR
臨床試験でもeGFR < 25mL/min/1.73㎡は対象外となっていることがわかると思います。
規格間の生物学的同等性が認められていない
10mgと20mgの生物学的同等性は認められていないようです。
そのため、10mg 2錠 ≠ 20mg 1錠となり、20mgの代替えとして10mgは使用できなくなっています。
7. 用法及び用量に関連する注意
リフヌア錠45mg 添付文書
7.2 10mg錠と20mg錠の生物学的同等性は示されていないため、20mgを投与する際には10mg錠を使用しないこと。
コメント