A:ナウゼリン坐剤を先に使って30分以上間隔を空けてからアンヒバ坐剤を使ってください。
(アンヒバ坐剤と書いていますが、アルピニー坐剤でもカロナール坐剤でもアセトアミノフェン坐剤でも以下同じです)
坐剤(坐薬、sup.:suppository)を使用する順番を考える際には成分と基剤が水溶性なのか脂溶性なのかが重要になります。
ナウゼリン坐剤の基剤は水溶性ですが、有効成分のドンペリドンは脂溶性薬剤です。
対してアンヒバ坐剤の基剤は油脂性ですが、有効成分のアセトアミノフェンは水溶性薬剤です。
ちなみに、水溶性基剤は直腸内の水分によって溶解するので室温保存が可能ですが、油脂性基剤は体温によって溶解するため冷所保存のものも多くなっています。
アンヒバsup.→ナウゼリンsup.で使用する場合
まずは、最初にアンヒバ坐剤を使用した場合を考えてみます。
アンヒバ坐剤は脂溶性基剤なので、直腸に挿入後、体温によって溶解します。
基剤が溶解することでアセトアミノフェンが放出され、直腸の粘膜を介して体内に吸収されます。
溶解したアンヒバ坐剤の脂溶性基剤は直腸内に油として残ります。
続いて、ナウゼリン坐剤を使用します。
ナウゼリン坐剤は水溶性基剤なので、直腸に挿入後、直腸内の水分によって溶解します。
基剤が溶解することでドンペリドンが放出されますが、ドンペリドンは脂溶性のため直腸内に残っているアンヒバ坐剤の油脂性基剤に溶けてしまい、うまく吸収されません。
結果として、ナウゼリン坐剤が十分な効果を発揮できなくなる可能性があるため、アンヒバ坐剤→ナウゼリン坐剤の順番で使用することは不適となります。
ナウゼリンsup.→アンヒバsup.で使用する場合
次に、最初にナウゼリン坐剤を使用した場合を考えてみます。
ナウゼリン坐剤は水溶性基剤なので、直腸に挿入後、直腸内の水分によって溶解します。
基剤が溶解することでドンペリドンが放出され、直腸の粘膜を介して体内に吸収されます。
次にアンヒバ坐剤を使用するのですが、ドンペリドンが直腸内で十分吸収されるためには30分程度の間隔を開けることが望ましいとされています。
十分な間隔を開けずに使用すると、吸収される前のドンペリドンがアンヒバ坐剤の油脂性基剤に混ざって吸収されにくくなってしまう可能性があります。
油脂性基剤を用いた坐薬と水溶性基剤を用いた坐薬
坐薬を使用する順番を考える際に必要となる使用基剤別の薬品一覧をまとめてみました。
油脂性基剤
下線は冷所保存
- アセトアミノフェン:アンヒバ剤剤、アルピニー坐剤、カロナール坐剤、アセトアミノフェン坐剤
- ジクロフェナクナトリウム:ボルタレンサポ、ジクロフェナクNa坐剤、ジクロフェナクナトリウム坐剤
- インドメタシン:インテバン坐剤、インドメタシン坐剤
- フェノバルビタールナトリウム:ワコビタール坐剤
- ジプロフィリン・dl-メチルエフェドリン塩酸塩(配合):アニスーマ坐剤
- ベタメタゾン:リンデロン坐剤
- サラゾスルファピリジン:サラゾピリン坐剤500mg
- メサラジン:ペンタサ坐剤
- セフチゾキシムナトリウム:エポセリン坐剤
- ビサコジル:テレミンソフト坐薬
- ジフルコルトロン吉草酸エステル・リドカイン(配合):ネリプロクト坐剤、ネイサート坐剤、ネリコルト坐剤、ネリザ坐剤
- 炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウム(配合):新レシカルボン坐剤
- トリベノシド・リドカイン(配合):ボラザG坐剤
- ヒドロコルチゾン・フラジオマイシン硫酸塩・ジブカイン塩酸塩・エスクロシド(配合):プロクトセディル坐薬
- テガフール:フトラフール坐剤
- モルヒネ塩酸塩:アンペック坐剤
テレミンソフト、ネリプロクト、ネリコルト:室温保存(高温を避けて保存)
ネイサート:室温保存(1〜30℃)
プロクトセディル:室温保存(30℃以下)
アンペック坐:冷凍を避け、室温(1〜30℃)で保存
水溶性基剤
- ジアゼパム:ダイアップ坐剤
- ドンペリドン:ナウゼリン坐剤、ドンペリドン坐剤
- 抱水クロラール:エスクレ坐剤
- ブプレノルフィン塩酸塩:レペタン坐剤
緊急性の強いものを優先して使うことも大切
当然ですが緊急性の強いものを優先して使うことも大切です。
ナウゼリン坐剤とアンヒバ坐剤のどちらもすぐに使いたい場合を考えてみます。
嘔吐による衰弱、発熱による衰弱。
どちらも大変ですが、発熱が極めて強いケースでない限り、嘔吐を止めることが優先されると思います。
そういう意味でもナウゼリン坐剤を先に使うことが推奨されます。
コメント