タグリッソの重症薬疹、キノロンの末梢神経障害、腱障害、精神症状など〜2019年9月24日改訂指示

令和元年9月24日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は大きく分けて4つの内容の改訂指示が出されています。

※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。

使用上の注意の改訂指示(令和元年9月24日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。
令和元年度指示分 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

今回、添付文書の改訂が実施されたのは以下の4つについてです。

  • バリシチニブ(オルミエント錠):静脈血栓塞栓症(VTE)
  • オシメルチニブメシル酸塩(タグリッソ錠):重症薬疹(TEN、SJS、多形紅斑)
  • トシリズマブ(遺伝子組換え)(アクテムラ):肝機能障害
  • フルオロキノロン系及びキノロン系抗菌薬:末梢神経障害、腱障害、精神症状

ちなみに、今年度からpmdaが発出する改定案の一部は旧記載要領と新記載要領の両方が掲載されるようになっています。

現時点で各医薬品が採用している記載方式に従ってまとめます。

バリシチニブ(オルミエント錠)による静脈血栓塞栓症

  • 医薬品名:
  • 成分名:バリシチニブ
  • 製造販売:日本イーライリリー
  • 効能・効果:既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
  • 用法・用量:通常、成人にはバリシチニブとして4mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態に応じて2mgに減量すること。
  • 薬価収載:2017年8月30日
  • 販売開始:2017年9月

重大な副作用に「静脈血栓塞栓症」が追記されます。
「静脈血栓塞栓症」についてはRMPの「重要な潜在的リスク」に記載されており、添付文書の「8. 重要な基本的注意」にも記載されていました。
今回の改訂指示では、「重要な基本的注意」に記載されていた「静脈血栓塞栓症」についての注意喚起が削除され、「重大な副作用」に「静脈血栓塞栓症」が追加される形になっています。

改訂指示の内容

【新記載要領】でまとめます。
下記の通り、「8. 重要な基本的注意」の8.10(深部静脈血栓症及び肺塞栓症についての記載)が削除されます。

8.重要な基本的注意
8.10 臨床試験において深部静脈血栓症及び肺塞栓症の発現が報告されているので、観察を十分に行いながら慎重に投与すること。異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:オルミエント錠 添付文書

また、「11. 副作用」の「11.1 重大な副作用」に以下の内容が追記されます。

11. 副作用
11.1 重大な副作用
11.1.6 静脈血栓塞栓症(頻度不明)
肺塞栓症及び深部静脈血栓症があらわれることが ある。
引用元:オルミエント錠 添付文書

注意喚起から具体的な副作用に変更された形ですね。

症例報告の内容

直近3年度の国内症例・・・と言っても販売開始後2年間しか経っていませんね。
静脈血栓塞栓症関連症例は5例で因果関係が否定できない症例も1例報告されています。
死亡例はありません。

臨床試験の段階で静脈血栓塞栓症が報告されており、肺塞栓症による死亡例も報告されていましたが因果関係が否定できない症例ではなかったため、注意喚起とされていましたが、販売開始後に因果関係が否定できない症例が報告されたため、重大な副作用とする方が望ましいと判断され、今回の改訂に至ったようです。

雑感

静脈血栓塞栓症(VTE*1)は深部静脈血栓症(DVT*2)と肺動脈塞栓症(PE*3)を合わせた疾患名です。
(主に)下肢静脈に生じた血栓(DVT)が遊離し、血流に流され肺動脈を塞いでしまう(PE)というものです。
エコノミークラス症候群の原因として知られるものです。
今回の改訂では詳しく述べられていませんが、下肢の静脈での血栓が原因となるのであれば、下肢の血流を促す運動などで予防する必要があるのではないかと思います。
服用中の下肢疼痛、下肢浮腫には注意が必要ですね。

ちなみに、同じヤヌスキナーゼ阻害薬(JAK*4阻害薬)であるゼルヤンツ錠(トファシチニブクエン酸塩)についても、つい先日(2019年8月22日)改訂指示が出され、「静脈血栓塞栓症」が重大な副作用に追記されたばかりです。

先日(2019年5月22日)に薬価収載されたスマイラフ錠(ペフィシチニブ臭化水素酸塩)には添付文書、RMPを含めて記載がありませんね。

オシメルチニブメシル酸塩(タグリッソ錠)による重症薬疹

  • 医薬品名:
  • 成分名:オシメルチニブメシル酸塩
  • 製造販売:アストラゼネカ
  • 効能・効果:EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌
  • 用法・用量:通常、成人にはオシメルチニブとして80mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
  • 薬価収載:2016年5月25日
  • 販売開始:2016年5月
  • 関連記事:

改訂指示の内容

【新記載要領】でまとめます。
下記の通り、「11. 副作用」の「11.1 重大な副作用」に以下の内容が追記されます。

11. 副作用
11.1 重大な副作用
11.1.5 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)、多形紅斑(頻度不明)
引用元:

症例報告の内容

直近3年度の重症薬疹に関する国内症例は以下の通りです。

  • 中毒性表皮壊死融解症:なし
  • 皮膚粘膜眼症候群:5例のうち2例が因果関係否定できない、死亡例なし
  • 多形紅斑関連症例:3例のうち3例が因果関係否定できない、死亡例なし

国内・海外の症例が集積したため今回の改訂が必要と判断されれいます。

雑感

上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR*5-TKI*6)である以上、皮膚障害は避けられないものでタグリッソにおいても「発疹・ざ瘡」、「爪囲炎」、「手掌・足底発赤知覚不全症候群(手足症候群)」などの副作用が知られています。
今回追加になった重症薬疹の機序はアレルギー性のものなので、EGFR-TKI特有のものではなく頻度も低いものですが、致命的な経過をたどることも多い副作用なので、皮膚の症状に対してこれまで以上に注意深く観察する必要性がありますね。

トシリズマブ(遺伝子組換え)(アクテムラ)による肝機能障害

  • 医薬品名:
    • アクテムラ点滴静注用80mg
    • アクテムラ点滴静注用200mg
    • アクテムラ点滴静注用400mg
      添付文書IFRMP
  • 成分名:トシリズマブ(遺伝子組換え)
  • 製造販売:中外製薬
  • 効能・効果:
    • 既存治療で効果不十分な下記疾患
      関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎、成人スチル病
    • キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見(C反応性タンパク高値、フィブリノーゲン高値、赤血球沈降速度亢進、ヘモグロビン低値、アルブミン低値、全身けん怠感)の改善。ただし、リンパ節の摘除が適応とならない患者に限る。
    • 腫瘍特異的T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群
  • 用法・用量:
    • 関節リウマチ、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎
      通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを4週間隔で点滴静注する。
    • 全身型若年性特発性関節炎、成人スチル病、キャッスルマン病
      通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回8mg/kgを2週間隔で点滴静注する。なお、症状により1週間まで投与間隔を短縮できる。
    • サイトカイン放出症候群
      通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として体重30kg以上は1回8mg/kg、体重30kg未満は1回12mg/kgを点滴静注する。
  • 薬価収載:
    • 200mg 2005年6月3日(販売名変更 2007年12月21日)
    • 80mg/400mg 2008年6月13日
  • 販売開始:
    • 200mg 2005年6月13日
    • 80mg/400mg 2008年6月13日
  • 医薬品名:
    • アクテムラ皮下注162mgシリンジ
    • アクテムラ皮下注162mgオートインジェクター
      添付文書IFRMP
  • 成分名:トシリズマブ(遺伝子組換え)
  • 製造販売:中外製薬
  • 効能・効果:既存治療で効果不十分な下記疾患
    • 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)
    • 高安動脈炎、巨細胞性動脈炎
  • 用法・用量:
    • 関節リウマチ
      通常、成人には、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回162mgを2週間隔で皮下注射する。なお、効果不十分な場合には、1週間まで投与間隔を短縮できる。
    • 高安動脈炎、巨細胞性動脈炎
      通常、トシリズマブ(遺伝子組換え)として1回162mgを1週間隔で皮下注射する。
  • 薬価収載:2013年5月24日
  • 販売開始:2013年5月24日

重大な副作用に「肝機能障害」が追加されます。

改訂指示の内容

【新記載要領】でまとめます。
下記の通り、「9. 特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.3 肝機能障害患者」に関する記載から文章が削除されます。

9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.3 肝機能障害患者
活動性肝疾患又は肝障害の患者に投与する場合には、トランスアミナーゼ値上昇に注意するなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなどの適切な処置を行うこと。
引用元:

また、「11. 副作用」の「11.1 重大な副作用」に下記の内容が追記されます。

11. 副作用
11.1 重大な副作用
肝機能障害
AST、ALT、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害があらわれることがある。
引用元:

症例報告の内容

直近3年度の肝機能障害関連症例に関する国内症例は11例、因果関係が否定できない症例はなく、死亡例もありませんでした。
ですが、国内外の症例が集積したことから改訂が望ましいと判断されています。

雑感

RMPでは重要な潜在的リスクに「肝機能障害」の記載があります。
副作用に「肝機能異常」、「ALT(GPT)上 昇、AST(GOT)上昇」が記載されていることから「肝機能障害」を起こす可能性がありました。
肝機能の数値を観察することはこれまでも行なっていると思うので、引き続き注意を行なって行くしかないですね。

フルオロキノロン系及びキノロン系抗菌薬(経口剤及び注射剤)による末梢神経障害、腱障害、精神症状

今回の改訂指示の対象となる薬剤は以下の通りです。

  • モキシフロキサシン塩酸塩:アベロックス錠400mg(添付文書IF
  • トスフロキサシントシル酸塩水和物:
    • オゼックス錠75、オゼックス錠150(添付文書IF)、オゼックス細粒小児用15%、オゼックス錠小児用60mg(添付文書IF
    • トスキサシン錠75mg、トスキサシン錠150mg(添付文書IF) 他
  • レボフロキサシン水和物:クラビット錠250mg、クラビット錠500mg、クラビット細粒10%(添付文書IF)、クラビット点滴静注バッグ500mg/100mL、クラビット点滴静注500mg/20mL(添付文書IF) 他
  • シタフロキサシン水和物:グレースビット錠50mg、グレースビット細粒10%(添付文書IF) 他
  • シプロフロキサシン塩酸塩水和物:シプロキサン錠100mg、シプロキサン錠200mg(添付文書IF) 他
  • シプロフロキサシン:シプロキサン注200mg、シプロキサン注400mg(添付文書IF) 他
  • メシル酸ガレノキサシン水和物:ジェニナック錠200mg(添付文書IF
  • プルリフロキサシン:スオード錠100(添付文書IF
  • オフロキサシン:タリビッド錠100mg(添付文書IF) 他
  • ノルフロキサシン:バクシダール錠100mg、バクシダール錠200mg(添付文書IF)、小児用バクシダール錠50mg(添付文書IF) 他
  • 塩酸ロメフロキサシン:バレオンカプセル100mg、バレオン錠200mg(添付文書IF
  • パズフロキサシンメシル酸塩:
    • パシル点滴静注液300mg、パシル点滴静注液500mg、パシル点滴静注液1000mg(添付文書IF
    • パズクロス点滴静注液300mg、パズクロス点滴静注液500mg、パズクロス点滴静注液1000mg
  • ピペミド酸水和物:ドルコール錠250mg(添付文書IF) 他

「末梢神経障害」、「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」、「精神症状」の3つの副作用について、記載の有無の見直しが行われると同時に、表記方法・初期症状の記載などが統一されています。

改訂指示の内容

【旧記載要領】でまとめます。
各薬剤の重大な副作用について、以下の3つの内容の記載が見直されます。

副作用
重大な副作用
末梢神経障害:末梢神経障害があらわれることがあるので、しびれ、筋力低下、痛み等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:使用上の注意改訂情報(令和元年9月24日指示分)

副作用
重大な副作用
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:使用上の注意改訂情報(令和元年9月24日指示分)

副作用
重大な副作用
精神症状:幻覚、せん妄等の精神症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:使用上の注意改訂情報(令和元年9月24日指示分)

モキシフロキサシン塩酸塩(アベロックス錠)

「重大な副作用」の項の「腱炎、腱断裂等の腱障害」の項を「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」とし、初期症状等の記載を整備する。

副作用
重大な副作用
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱の疼痛や炎症がみられた周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、外国において、投与終了数ヵ月後にこれらの症状を発現した症例も報告されている。
引用元:アベロックス錠 添付文書

トスフロキサシントシル酸塩水和物(オゼックス等)
  1. 「重大な副作用」の項に「末梢神経障害」を追記する。
  2. 「重大な副作用」の項に「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」を追記する。
  3. 「重大な副作用」の項に「精神症状」を追記する。

副作用
重大な副作用

  • 末梢神経障害:末梢神経障害があらわれることがあるので、しびれ、筋力低下、痛み等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • 精神症状:幻覚、せん妄等の精神症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

引用元:オゼックス錠 添付文書

レボフロキサシン水和物(クラビット等)・オフロキサシン(タリビッド錠等)
  1. 「重大な副作用」の項に「末梢神経障害」を追記する。
  2. 「重大な副作用」の項の「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の項の初期症状等の記載を整備する。

副作用
重大な副作用

  • アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。60歳以上の患者、コルチコステロイド剤を併用している患者、臓器移植の既往のある患者であらわれやすい。
  • 末梢神経障害:末梢神経障害があらわれることがあるので、しびれ、筋力低下、痛み等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

引用元:クラビット錠 添付文書

シタフロキサシン水和物(グレースビット等)

「重大な副作用」の項に「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」を追記する。

副作用
重大な副作用
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:グレースビット錠 添付文書

シプロフロキサシン塩酸塩水和物(シプロキサン錠等)・シプロフロキサシン(シプロキサン注等)

「重大な副作用」の項の「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の項の初期症状の記載を整備する。

副作用
重大な副作用
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱の疼痛や炎症がみられた周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお,外国において、投与終了数ヵ月後にこれらの症状を発現した症例も報告されている。
引用元:シプロキサン 添付文書

メシル酸ガレノキサシン水和物(ジェニナック錠)
  1. 「重大な副作用」の項に「末梢神経障害」を追記する。
  2. 「重大な副作用」の項に「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」を追記する。

副作用
重大な副作用

  • 末梢神経障害:末梢神経障害があらわれることがあるので、しびれ、筋力低下、痛み等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

引用元:ジェニナック錠 添付文書

プルリフロキサシン(スオード錠)・ピペミド酸水和物(ドルコール等)
  1. 「重大な副作用」の項に「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」を追記する。
  2. 「重大な副作用」の項に「精神症状」を追記する。

副作用
重大な副作用

  • アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害
    アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • 精神症状
    せん妄、記憶障害等の精神症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

引用元:スオード錠 添付文書

ノルフロキサシン(バクシダール錠等)

「重大な副作用」の項の「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の項に初期症状等を追記する。

副作用
重大な副作用
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:バクシダール錠 添付文書

塩酸ロメフロキサシン(バレオン)
  1. 「重大な副作用」の項に「精神症状」を追記する。
  2. 「重大な副作用」の項の「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の

項に初期症状等の記載を整備する。

副作用
重大な副作用

  • アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれたとの報告ることがあるので、観察を十分に行い、異常腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  • 精神症状:幻覚、せん妄等の精神症状があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

引用元:バレオン 添付文書

パズフロキサシンメシル酸塩(パシル点滴静注液/パズクロス点滴静注液)

「重大な副作用」の項の「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」の項に初期症状を追記する。

副作用
重大な副作用
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害:アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
引用元:パシル点滴静注液 添付文書

症例報告の内容

「アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害」、「精神症状」はニューキノロンやオールドキノロンの性質によるものなので共通のリスクとして考えられるため、今回の添付文書改訂に至っています。
「末梢神経障害」についてはキノロン特有のものではありませんが、国内症例が集積していることを踏まえて今回の改訂となりました。

末梢神経障害

直近3年度の末梢神経障害に関する国内症例報告数は以下の通りです。

  • トスフロキサシントシル酸塩水和物:0例
  • レボフロキサシン水和物:6例(因果関係が否定できないもの1例)、死亡例1例(因果関係が否定できないものではない)
  • メシル酸ガレノキサシン水和物・オフロキサシン:0例
アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害

直近3年度のアキレス腱炎、腱断裂等の腱障害に関する国内症例報告数は以下の通りです。

  • モキシフロキサシン塩酸塩・トスフロキサシントシル酸塩水和物:0例
  • レボフロキサシン水和物:36例(因果関係についての評価なし)、死亡例なし
  • そのほか全て:0例

フルオロキノロン系抗菌薬による腱障害のメカニズムの詳細は不明とされていますがMMPの活性化を介しているという説が有力とされています。
フルオロキノロン系抗菌薬がマトリックスメタロプロテアーゼ2(MMP-2*7)を活性化することで、組織のI型コラーゲンが分解され、その結果、腱障害が起きるというものです。

精神症状

直近3年度の精神症状の腱障害に関する国内症例報告数は以下の通りです。

  • トスフロキサシントシル酸塩水和物・プルリフロキサシン・塩酸ロメフロキサシン・ピペミド酸水和物:0例

精神症状はニューキノロン系抗菌薬のGABA受容体結合阻害作用により、GABA神経が抑制されることで起きると考えられています。

雑感

キノロン、ニューキノロンに特徴的な副作用が整理された形ですね。
キノロンは本来そこまで第一選択となる薬剤ではないはずなのに、広く使用されている抗菌薬です。
抗菌スペクトルの広さもありますが、メーカーの宣伝が上手だったのもありますよね。
実際にはそこまで使いやすい薬剤ではなく、金属イオンとのキレートによる吸収低下もありますし、今回改訂の対象となった特徴的な副作用もあるのに不思議ですよね。

*1:Venous ThromboEmbolism

*2:Deep Venous Thrombosis

*3:Pulmonary Eembolism

*4:JAnus Kinase

*5:Epidermal Growth Factor Receptor

*6:Tyrosine Kinase Inhibitor

*7:Matrix MetalloProteinase-2

 

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