【まとめ】入院中の調剤報酬についての考え方〜入院料の区別と合わせて徹底解説!

患者さんの家族から眼科の処方箋を受け取り、患者さんとお話していると。
「本人は◯◯病院に入院中なんですよー」
この場合、注意が必要です。(本人が受診したのかどうかはさておき・・・)

患者さんが入院中の場合、調剤報酬請求上、大幅な制限を受けることになります。
入院先の病棟にもよりますが、いずれの病棟に入院していても、一部を除いて薬学管理料は算定できません。
常に医師の管理の元にある入院と言う状態を考えれば、薬学管理料が算定できないのは当然ですね。


入院中の患者さんに対する他医療機関での診療報酬算定については平成22年(2010年)の診療報酬改定で詳細が定められました。

ちなみに、日医工さんの資料がとてもわかりやすいので、リンクを貼らせていただきます。
http://www.nichiiko.co.jp/stu-ge/mpi/pdf/20100614taishinn.pdf#page=8
(↑リンク切れしちゃってますね・・・。わかりやすい資料だったのに・・・)

入院中の患者に対する基本的な考え方(H22年度診療報酬改定)

平成22年(2010年)の診療報酬改定の詳細を見て行きます。

平成22年度診療報酬改定における主要改定項目について

まずは117ページ(pdfファイル 122ページ)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-003.pdf#page=122

骨子【Ⅱ-2-(3)(4)】 第1 基本的な考え方
特定集中治療室管理料及び入院中の患者の対診並びに他医療機関受診時の診療報酬算定方法の整理について、分かりやすい点数体系に整理する。

次に119ページ(pdfファイル 124ページ)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-003.pdf#page=124

骨子【Ⅱ-2-(3)(4)】  第2 具体的な内容
2.分かりやすい点数設定について
(2) 入院中の患者の対診及び他医療機関受診時の算定方法の整理
入院中の患者に対して対診を行う場合及び入院中の患者が他の医療機関を受診する場合の診療報酬の算定方法について、医療現場における実態を踏まえ、明確化する。

転医と対診についての考え方

保医発0305第1号 平成22年3月5日 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について
のpdfファイル 11ページ
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-029.pdf#page=11

別添1 医科診療報酬点数表に関する事項 第1章 基本診療料 第2部 入院料等
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(1) 入院中の患者が、当該入院の原因となった傷病以外の傷病に罹患し、入院している保険医療機関(以下本項において「入院医療機関」という。)以外での診療の必要が生じた場合は、他の保険医療機関(以下本項において「他医療機関」という。)へ転医又は対診を求めることを原則とする。

転医とは、診察を受ける医師を変更することです。
似たような言葉に転院がありますが、転院は入院している病院を変えることです。
普段受診している医院・病院を変えて、別の医院・病院の医師を受診するのは転医になります。
それに対して、対診とは入院中の病院を別の病院・医院の医師が訪問して診察を行うことです。

(入院中の医療機関の)診療報酬請求の考え方

2010年度改定で追加された内容ですが、資料としては最新(2022年度改定)のものを掲載します。
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和4年3月4日 保医発0304第1号)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項の21ページです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf#page=21

第2部 入院料等 <通則>
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(2) 入院中の患者(DPC算定病棟に入院している患者を除く。)に対し他医療機関での診療が必要となり、当該入院中の患者が他医療機関を受診した場合(当該入院医療機関にて診療を行うことができない専門的な診療が必要となった場合等のやむを得ない場合に限る。)は、他医療機関において当該診療に係る費用を算定することができる。ただし、短期滞在手術等基本料3、医学管理等(診療情報提供料を除く。)、在宅医療、投薬、注射(当該専門的な診療に特有な薬剤を用いた受診日の投薬又は注射に係る費用を除き、処方料、処方箋料及び外来化学療法加算を含む。)及びリハビリテーション(言語聴覚療法に係る疾患別リハビリテーション料を除く。)に係る費用は算定できない

(2)に書かかれていることのうち、薬局にも関わる部分をざっくりとまとめてみると・・・。
入院中、やむを得ず他医療機関で専門的な診療を受けた場合、その他医療機関が診療報酬を請求してもいいけど、投薬の費用は受診日だけしか算定できませんよ。ということです。

ですが、これについては2010年の改定当時、全国保険医団体連合会などから多くの反発が起こりました。
2010年4月19日 入院患者の他医療機関受診で要請(全国保険医団体連合会 病院有床診療所対策部会)

その結果、平成22年6月4日に保医発0604第1号が発行され、当初は記載されていなかった(3)、(4)の文書が追記されました。
21ページです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf#page=21

第2部 入院料等 <通則>
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(3) (2)のただし書にかかわらず、出来高入院料を算定する病床に入院している患者の場合には、他医療機関における診療に要する費用のうち、当該専門的な診療に特有な薬剤を用いた投薬に係る費用は算定できる。

これにより、出来高入院料を算定している場合については、投薬に関する費用を算定可能となりました。

入院中であることの情報提供について

同じく資料21ページです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf#page=21

第2部 入院料等 <通則>
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(5) 入院中の患者が他医療機関を受診する場合には、入院医療機関は、当該他医療機関に対し、当該診療に必要な診療情報(当該入院医療機関での算定入院料及び必要な診療科を含む。)を文書により提供する(これらに要する費用は患者の入院している保険医療機関が負担するものとする。)とともに、診療録にその写しを添付すること。

入院中の患者が他医療機関を受診することになった場合、入院中の医療機関から受診先にその情報が提供されます。
が、これがなかなか薬局には伝わってこないんですよね。(あとで詳しくまとめます)

入院基本料等の減算について

同じく資料21ページです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf#page=21

第2部 入院料等 <通則>
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(6) (2)の規定により入院中の患者が他医療機関を受診する日の入院医療機関における診療報酬の算定については、以下のとおりとすること。この場合において、1点未満の端数があるときは、小数点以下第一位を四捨五入して計算すること。
ア 入院医療機関において、当該患者が出来高入院料を算定している場合は、出来高入院料は当該出来高入院料の基本点数の 10%を控除した点数により算定すること。ただし、他医療機関において、区分番号「E101」シングルホトンエミッションコンピューター断層撮影、区分番号「E101-2」ポジトロン断層撮影、区分番号「E101-3」ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-4」ポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-5」乳房用ポジトロン断層撮影、区分番号「M001」体外照射の3の強度変調放射線治療(IMRT)、区分番号「M001-2」ガンマナイフによる定位放射線治療、区分番号「M001-3」直線加速器による放射線治療の1の定位放射線治療の場合又は区分番号「M001-4」粒子線治療に係る費用を算定する場合は、出来高入院料は当該出来高入院料の基本点数の5%を控除した点数により算定すること。
イ 入院医療機関において、当該患者が特定入院料等を算定している場合であって、当該他医療機関において特定入院料等に含まれる診療に係る費用(特掲診療料に限る。)を算定する場合は、特定入院料等は、当該特定入院料等の基本点数の 40%を控除した点数他医療機関において、区分番号「E101」シングルホトンエミッションコンピューター断層撮影、区分番号「E101-2」ポジトロン断層撮影、区分番号「E101-3」ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-4」ポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-5」乳房用ポジトロン断層撮影、区分番号「M001」体外照射の3の強度変調放射線治療(IMRT)、区分番号「M001-2」ガンマナイフによる定位放射線治療、区分番号「M001-3」直線加速器による放射線治療の1の定位放射線治療の場合又は区分番号「M001-4」粒子線治療に係る費用を算定する場合は、特定入院料等は当該特定入院料等の基本点数の 35%を控除した点数により算定すること。ただし、有床診療所療養病床入院基本料、精神療養病棟入院料、認知症治療病棟入院料又は地域移行機能強化病棟入院料を算定している場合は、当該特定入院料等の基本点数の 20%を控除した点数他医療機関において、区分番号「E101」シングルホトンエミッションコンピューター断層撮影、区分番号「E101-2」ポジトロン断層撮影、区分番号「E101-3」ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-4」ポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-5」乳房用ポジトロン断層撮影、区分番号「M001」体外照射の3の強度変調放射線治療(IMRT)、区分番号「M001-2」ガンマナイフによる定位放射線治療、区分番号「M001-3」直線加速器による放射線治療の1の定位放射線治療の場合又は区分番号「M001-4」粒子線治療に係る費用を算定する場合は、特定入院料等は当該特定入院料等の基本点数の 15%を控除した点数により算定すること。
ウ 入院医療機関において、当該患者が特定入院料等を算定している場合であって、当該他医療機関において特定入院料等に含まれる診療に係る費用(特掲診療料に限る 。 )を算定しない場合は、特定入院料等は、当該特定入院料等の基本点数の 10%を控除した点数により算定すること。ただし、他医療機関において、区分番号「E101」シングルホトンエミッションコンピューター断層撮影、区分番号「E101-2」ポジトロン断層撮影、区分番号「E101-3」ポジトロン断層・コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-4」ポジトロン断層・磁気共鳴コンピューター断層複合撮影、区分番号「E101-5」乳房用ポジトロン断層撮影、区分番号「M001」体外照射の3の強度変調放射線治療(IMRT)、区分番号「M001-2」ガンマナイフによる定位放射線治療、区分番号「M001-3」直線加速器による放射線治療の1の定位放射線治療の場合又は区分番号「M001-4」粒子線治療に係る費用を算定する場合は、特定入院料等は当該特定入院料等の基本点数の5%を控除した点数により算定すること。
他医療機関において当該診療に係る費用を一切算定しない場合には、他医療機関において実施された診療に係る費用は、入院医療機関において算定し、入院基本料等の基本点数は控除せずに算定すること。この場合において、入院医療機関で算定している入院料等に包括されている診療に係る費用は、算定できない。なお、この場合の医療機関間での診療報酬の分配は、相互の合議に委ねるものとする。

患者が他医療機関を受診した場合の入院中の医療機関の診療報酬請求についてです。
簡単にまとめると、それぞれの場合において、当日の点数について、以下のように考えます。

  • 出来高入院料を算定している場合:出来高入院料の基本点数の10%を控除した点数を算定
  • 特定入院料等を算定している場合
    • 他医療機関で特定入院料等に含まれる費用を算定する場合:特定入院料等の基本点数の40%を控除した点数を算定
      (有床診療所療養病床入院基本料、精神療養病棟入院料、認知症治療病棟入院料、地域移行機能強化病棟入院料を算定している場合:特定入院料等の基本点数の20%を控除した点数を算定)
    • 他医療機関で特定入院料等に含まれる費用を算定しない場合:特定入院料等の基本点数の10%を控除した点数を算定
  • 他医療機関で診療に係る費用を算定しない場合
    • 診療内容が入院料等に包括されていない場合:実施された診療について入院医療機関で算定可能(他医療機関から入院医療機関に費用請求?)
    • 診療内容が入院料等に包括されている場合:実施された診療について算定不可となるため合議により診療報酬の分配を決定する

入院中に他医療機関を受診した場合、入院中の医療機関の入院料は減算を受けるということは覚えておかないといけませんね。

入院中の医療機関のレセプト提出方法

レセプト提出方法についても詳細が記載されています。

資料23ページです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf#page=23

第2部 入院料等 <通則>
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(8) 入院医療機関においては、診療報酬明細書の摘要欄に、「他医療機関を受診した理由」、「診療科」及び「○他 (受診日数:○日)」を記載すること。ただし、(6)のウの特定入院料等を10%減算する場合(ただし書に該当し5%減算する場合を含む。)には、他医療機関のレセプトの写しを添付すること。

DPC算定病棟に入院している場合

同じく資料23ページです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf#page=23

第2部 入院料等 <通則>
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(9) 入院中の患者(DPC算定病棟に入院している患者であって「診療報酬の算定方法」により入院料を算定する患者に限る。)に対し他医療機関での診療が必要となり、当該入院中の患者が他医療機関を受診した場合(当該入院医療機関にて診療を行うことができない専門的な診療が必要となった場合等のやむを得ない場合に限る。)の他医療機関において実施された診療に係る費用は、入院医療機関の保険医が実施した診療の費用と同様の取扱いとし、入院医療機関において算定すること。なお、この場合の医療機関間での診療報酬の分配は、相互の合議に委ねるものとする。

DPC算定中の場合は、他医療機関を受診した場合でも、入院先の病院で実施したものと同じ扱いになります。
つまり、他医療機関は診療報酬請求を行うことはできず、入院先の病院に費用を実費で請求する形になります。
その詳細については、医療機関同士の話し合いというわけです。

入院料の区分

今までの話の中でいくつか入院料の区分が出てきましたので簡単にまとめておきます。
この考え方は薬局における調剤報酬の請求にも大きく関わってくるので知っておきましょう。

出来高入院料

いわゆる通常の入院料となります。
入院中に行った医療行為に応じて診療報酬の請求が可能です。
行為を行えば行っただけ費用を請求する形になります。

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(令和4年3月4日 保医発0304第1号)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項の21ページです。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000984041.pdf#page=21

第2部 入院料等 <通則>
5 入院中の患者の他医療機関ヘの受診
(4) 本通則において、出来高入院料とは、特定入院料、一般病棟入院基本料(「注 11」の規定により療養病棟入院料1の例により算定する場合に限る。)、特定機能病院入院基本料(「注9」の規定により療養病棟入院料1の例により算定する場合に限る。)、専門病院入院基本料(「注8」の規定により療養病棟入院料1の例により算定する場合に限る。)、療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料(「注6」又は「注 12」の例により算定する場合に限る。)、有床診療所療養病床入院基本料及び特定入院基本料(以下本通則において「特定入院料等」という。)を除く入院基本料をいう。

出来高入院料以外の入院料

上で出てきた特定入院料、療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料及び特定入院基本料についてまとめます。

特定入院料

病棟や病室の持つ特有の機能、特定の疾患等に対する入院医療などを評価しているのが特定入院料です。
いわゆる包括点数ですが、包括される医療行為等はそれぞれの特定入院料で異なります。
算定するためには施設基準を満たし、届出が必要です。

特定入院料一覧(2022年度改定)を並べます。

  • 救命救急入院料
  • 特定集中治療室管理料
  • ハイケアユニット入院医療管理料
  • 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
  • 小児特定集中治療室管理料
  • 新生児特定集中治療室管理料
  • 総合周産期特定集中治療室管理料
  • 新生児治療回復室入院医療管理料
  • 一類感染症患者入院医療管理料
  • 特殊疾患入院医療管理料
  • 小児入院医療管理料
  • 回復期リハビリテーション病棟入院料
  • 地域包括ケア病棟入院料
  • 特殊疾患病棟入院料
  • 緩和ケア病棟入院料
  • 精神科救急急性期医療入院料
  • 精神科急性期治療病棟入院料
  • 精神科救急・合併症入院料
  • 児童・思春期精神科入院医療管理料
  • 精神療養病棟入院料
  • 認知症治療病棟入院料
  • 特定一般病棟入院料
  • 地域移行機能強化病棟入院料
  • 特定機能病院リハビリテーション病棟入院料

療養病床入院基本料(療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料)

比較的症状が安定した患者が長期にわたって療養を行うのが療養病棟です。
ADL、医療の程度に応じて療養病棟入院基本料が決められている包括、いわゆるまるめの点数です。
検査、投薬、注射、病理診断、画像診断、処置の費用はこの入院基本料に含まれており、1日あたりの点数で定められています。

一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料、専門病院入院基本料について、療養病棟入院料1の例により算定する場合も含まれます。

特定入院基本料

障害者施設等入院基本料を算定している患者のうち、入院日数が90日を越える患者を特定患者とし、特定入院基本料を算定するよう定められています。
これも包括で、検査、投薬、注射、病理診断、画像診断、処置の費用が含まれており、1日あたりの点数で定められています。

診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和4年 厚生労働省告示第54号)別表第一 医科診療報酬点数表のファイル 23ページ目です。

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000907834.pdf#page=23

A106 障害者施設等入院基本料(1日につき)
注5 当該病棟に入院している特定患者(当該病棟に90日を超えて入院する患者(別に厚生労働大臣が定める状態等にあるものを除く。)をいう。)に該当する者(第3節の特定入院料を算定する患者を除く。)については、注1から注3まで及び注12の規定にかかわらず、特定入院基本料として969点を算定する。ただし、月平均夜勤時間超過減算として所定点数の100分の15に相当する点数を減算する患者については、863点を算定する。この場合において、特定入院基本料を算定する患者に対して行った第3部検査、第5部投薬、第6部注射及び第13部病理診断並びに第4部画像診断及び第9部処置のうち別に厚生労働大臣が定める画像診断及び処置の費用(フィルムの費用を含み、除外薬剤・注射薬の費用を除く。)は、所定点数に含まれるものとする。

DPC

DPCとは、Diagnosis Procedure Combination(診断群分類)の略です。
診断群分類包括評価で使用される分類で、診断群分類包括評価を指してDPCと呼ぶことが多いです。
診断分類群に応じて1日あたりの包括入院料が定められています。
要件をみたした病院(DPC対象病院)のみ算定が可能です。

入院中の患者に対する調剤報酬請求

さて、薬局に関連する部分を見ていきましょう。

出来高入院料で入院中の場合

平成22年6月4日 疑義解釈資料の送付について(その4)
別添 医科診療報酬点数表関係 【他医療機関の受診】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-109.pdf#page=2

(問1) 出来高入院料を算定する病床に入院中の患者について、入院医療機関において行うことができない専門的な診療が必要となり、他医療機関を受診した際に、投薬を行った場合には、その費用はどのように取り扱うのか。
(答) 他医療機関において、専門的な診療に特有な薬剤を用いた投薬に係る費用(調剤料、薬剤料、処方料又は処方せん料等)を算定できる。また、薬局において調剤した場合には、当該薬局において調剤に係る費用を算定できる
※ 出来高入院料を算定する病床とは、DPC算定病床以外の病床であって、療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料及び特定入院基本料を除く入院基本料を算定する病床をいう。

出来高入院料が算定されている場合です。
調剤料、薬剤料が算定可能と記載されています。(処方元は処方せん料)
でも、患者さんが入院中ってことはわかっても、出来高病棟とかDPC病棟とかは患者さん自身もわかってない可能性があるのでは・・・。
これについては、次に記載されています。

(問2) 入院中の患者が他医療機関を受診する場合、入院医療機関、他医療機関、薬局間での処方内容等の情報共有は、どのように行うのか。
(答) 他医療機関において院内処方を行う場合には、他医療機関が入院医療機関に対して処方の内容を情報提供する。
また、他医療機関が処方せんを交付する場合には、処方せんの備考欄に、①入院中の患者である旨、②入院医療機関の名称、③出来高入院料を算定している患者であるか否かについて記載して交付することとし、当該処方せんに基づき調剤を行った薬局は、調剤内容について入院医療機関に情報提供する
※ 出来高入院料を算定する患者とは、DPC算定病棟に入院する患者以外の患者であって、療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料及び特定入院基本料を除く入院基本料を算定する患者をいう。

上に記載した留意事項の(5)にあるように、入院中の病院から受診先の病院・医院には情報提供が行われています。
受診先は患者の入院情報について知っているので、処方せんにその情報を記載しなければなりません。
処方せん備考欄には

  • 入院中の患者である旨
  • 入院医療機関の名称
  • 出来高入院料を算定している患者であるか否かについて

が記載されるので、これにより、患者さんが出来高病棟に入院中かどうかが判断できます。

また、調剤を行った薬局は調剤内容を入院先に情報提供しなければなりません。

ただ、あまり詳細が記載されていませんね。
調剤料、薬剤料以外の点数は全部ダメなのかどうなのか?
情報提供の内容はどのようなものか?
出来高入院料以外の特定入院基本料やDPC包括支払いで入院している患者さんに対してはどうすればいいのか?
その答えは次にあります。

出来高入院料が算定されている患者に算定可能な調剤報酬

平成22年6月11日 疑義解釈資料の送付について(その5)
別添3 調剤診療報酬点数表関係 【他医療機関の受診】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-115.pdf#page=10

(問1) 入院中の患者(DPC算定病棟に入院している患者を除く。)について、入院医療機関において行うことができない専門的な診療のため他医療機関の受診が必要となり、当該他医療機関から交付された処方せんに基づき薬局において調剤した場合、調剤報酬の算定等は具体的にどのように行うのか。
(答) 当該薬局において、調剤基本料(加算を含む。)及び調剤情報提供料(算定要件を満たす場合に限る。)を算定することができる。ただし、当該患者が出来高入院料を算定する病床に入院している患者である場合には、これらの費用のほか、調剤料(加算を含む。)、薬剤料及び特定保険医療材料料についても算定することができる(調剤情報提供料以外の薬学管理料については、算定することはできない)。
算定に当たっては、調剤報酬明細書の摘要欄に、①入院中の患者である旨、②入院医療機関の名称、③出来高入院料を算定している患者であるか否かについて記載すること
また、調剤内容(医薬品名、規格単位、用法・用量、調剤数量(投薬日数、調剤回数等)等)について、入院医療機関に情報提供すること
※ 出来高入院料を算定する病床とは、DPC算定病床以外の病床であって、療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料及び特定入院基本料を除く入院基本料を算定する病床をいう。
※ 当該他医療機関が交付した処方せんの備考欄には、①入院中の患者である旨、②入院医療機関の名称、③出来高入院料を算定している患者であるか否かについて記載されている(平成22年6月4日厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その4)」の問2参照)。

まずは、出来高入院料が算定されている患者についてです。
調剤基本料(加算含む)、調剤情報提供料(現在の服薬情報等提供料1)が算定可能です。
さらに、出来高入院料を算定している(出来高病棟に入院している)場合は、調剤料(加算含む)(現在の薬剤調製料とその加算、調剤管理料、外来服薬支援料2が対応すると考えます)、薬剤料、特定保険医療材料料も算定可能です。
※については正式な文書が存在しないため、あくまでも私見です。

レセプト摘要欄には以下の内容を記載する必要があります。

  • 入院中の患者である旨
  • 入院医療機関の名称
  • 出来高入院料を算定している患者であるか否か

入院中の病院へ情報提供を行う調剤内容は、以下の内容が例として挙げられています。

  • 医薬品名
  • 規格単位
  • 用法・用量
  • 調剤数量(投薬日数、調剤回数等)

服薬情報等提供料1が算定可能なので、以下の内容を上の情報提供に合わせて記載することで算定要件を満たすことが可能となります。

  • 当該患者の服薬状況
  • 当該患者に対する服薬指導の要点、患者の状態等
  • 当該患者が容易に又は継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報

特定入院料等が算定されている患者に算定可能な調剤報酬

特定入院料等とは、療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料、特定入院基本料、特定入院料を指します。

平成22年12月6日 疑義解釈資料の送付について(その7)
別添1 医科診療報酬点数表関係 【他医療機関の受診】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-142.pdf#page=2

(問3) 包括払い病床(療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料、特定入院基本料、特定入院料を算定する病床をいう。)に入院中の患者が他医療機関を受診した場合、他医療機関は、受診日以外の投薬に係る費用を算定できないが、必要に応じて、患者が入院中の保険医療機関と合議し、当該費用を精算することは可能か。
(答)可能である。

先ほどの資料と合わせて考えます。

調剤基本料(加算含む)、調剤情報提供料(現在の服薬情報等提供料1・2)が算定可能ですが、調剤料(加算含む)、薬剤料、特定保険医療材料料に関しては入院中の保険医療機関と合議ということになります。

DPC算定病棟に入院している患者に対する調剤報酬の考え方

平成22年6月11日 疑義解釈資料の送付について(その5)
別添3 調剤診療報酬点数表関係 【他医療機関の受診】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-115.pdf#page=10

(問2) 入院中の患者(DPC算定病棟に入院している患者に限る。)について、入院医療機関において行うことができない専門的な診療のため他医療機関の受診が必要となり、当該他医療機関から交付された処方せんに基づき薬局において調剤した場合、調剤報酬の算定等は具体的にどのように行うのか。
(答) 当該薬局における調剤に係る費用は、入院医療機関が行った調剤に係る費用と同様の取扱いとし、入院医療機関において算定することとなるため、この場合の入院医療機関と当該薬局との間での診療報酬の分配は、相互の合議により行うこと。
また、調剤内容(医薬品名、規格単位、用法・用量、調剤数量(投薬日数、調剤回数等)等)について、入院医療機関に情報提供すること。

DPC算定中の場合は、他医療機関(薬局含む)も含めての「まるめ」となります。
ですので、薬局で必要となった費用は処方元に請求するという形になります。
ただし、調剤内容の情報提供に関しては同様の義務があります。

DPC入院料算定中の費用の請求の例

平成22年7月28日 疑義解釈資料の送付について(その6)
別添1 医科診療報酬点数表関係 【他医療機関の受診】
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/dl/index-124.pdf#page=5

(問13) A医療機関のDPC算定病床に入院中の患者が他医療機関(Bとする)を受診した場合の取扱いについては、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成22年3月5日保医発0305第1号)に「医療機関間での診療報酬の分配は、相互の合議に委ねるものとする。」とあるが、実際どのようにすればいいのか。
(答) 基本的に「合議」とは、両医療機関間の自由契約の元で金銭収受を行う事を意味しているため、明確なルールというものはないが、一部の医療機関の間では、A医療機関からB医療機関へ患者が受診する際に、「医科点数表に則って算定した点数を、全額当院に請求してください」という趣旨の連絡をして、精算を行っている事例があると聞いている。このような事例を参考にしつつ、適切に精算を行っていただきたい。

ここに書かれている通り、自分が経験したことがあるケースのいずれも、事前に、「調剤報酬に乗っ取り、通常通り計算したものを請求してください」と入院先から(の指示を処方元より)連絡していただいたケースでした。
通常通りと言っても、出来高病棟入院中と同様に、服薬情報等提供料以外の薬学管理料は算定していませんが。(薬歴管理料は非算定)

まとめ

今、振り返ってみると、疑義解釈で決まった部分がほとんどという特殊なケースだったことがわかりますね。
中医協と現場との温度差があったことを物語っている気がします。

それでは、入院中の調剤報酬請求についてまとめます。

入院中である旨の連絡

入院中の患者さんが他の医療機関を受診する場合、入院中の病院から受診先の医療機関に情報提供が行われます。
受診先の医療機関は処方箋を発行する際に、その情報を元に、以下の内容をを処方箋の備考欄に記載します。

  • 入院中の患者である旨
  • 入院医療機関の名称
  • 出来高入院料を算定している患者であるか否か

医療機関での処方箋発行に関わっている方、どうぞよろしくお願いします。

入院中に算定可能な調剤報酬のまとめ

処方箋の備考欄に出来高入院料算定とある場合は「出来高入院料算定」とわかります。
そうでない場合は、「療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料、特定入院基本料のいずれかを算定」となります。「DPC入院料算定」の場合はその旨の連絡が別途来るはずです。

出来高入院料算定の場合

  • 調剤基本料(加算含)
  • 服薬情報等提供料1
  • 薬剤調製料(加算含)
  • 調剤管理料
  • 外来服薬支援料2
  • 薬剤料
  • 特定医療材料料

※については正式な文書が存在しないため、あくまでも私見です。

レセプト摘要欄への記載事項

レセプト摘要欄に以下の内容を記載します。

  • 入院中の患者である旨
  • 入院医療機関の名称
  • 出来高入院料を算定している患者であること

特定入院料等算定の場合

  • 調剤基本料(加算含)
  • 服薬情報等提供料1

調剤料(加算含)、薬剤料、特定医療材料料については算定不可となり、保険請求を行うことはできないため、入院先の医療機関と合議の上、入院先に費用の請求を行う。

レセプト摘要欄への記載事項

レセプト摘要欄に以下の内容を記載します。

  • 入院中の患者である旨
  • 入院医療機関の名称
  • 出来高入院料を算定していない患者であること

DPC算定の場合

保険請求を行うことができないため、入院先の医療機関と合議の上、入院先に費用の請求を行う。

問題点

ごく稀にですが、冒頭のケースのように、入院中の患者さんやその家族が入院中の病院に断りなく、他の医療機関を受診し、薬をもらって帰ってしまうケースがあります。
そもそも、本人が受診していない(入院中だから)のに、処方箋が発行されることに問題があるとは思うのですが・・・。
入院中の医療機関や処方元がそれに気付いて、後から処方中止になればまだいいのですが、レセプトの返戻が帰って来て気付く場合もあります。

出来高入院料の場合は薬学管理料が取れないだけなんですが、それ以外のケースでは、薬剤料まで取れなくなってしまいます。
包括入院料を算定する場合、入院時に患者さんに他の医療機関を勝手に受診できないことは説明されているはずではあるのですが、やはり0にはなりません。

このように、投薬後、レセプト請求後に入院中であることに気付いた場合、遅れて入院中(入院していた)医療機関に費用を請求することになるのですが、そこでトラブルとなってしまったケースも耳にします。
代理の方が来られた場合は特に、患者さんの現状のチェックを行うことが必要ですね。

(R4年度改定以降)入院中の患者に対する調剤報酬の請求

令和4年度診療報酬改定では、調剤報酬について調剤技術料と薬学管理理料の組み替えが行われました。
その結果、今まで調剤技術料として評価されていた調剤料が廃止され、新たに調剤技術料の薬剤調製料、薬学管理料の調剤管理料に配分されました。

そこで、気になるのは入院中の患者に対して算定できる調剤報酬がどうなるのか?というところです。
これについて明確な資料は存在しないのですが、これまで通り算定可能と個人的には考えています。

 

医療用医薬品情報提供データベースDrugShotage.jp

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