2021年1月22日に承認された医薬品のうち、特に気になった薬について紹介します。
この記事ではエドルミズ錠(一般名:アナモレリン塩酸塩)について紹介します。
初のがん悪液質治療薬
エドルミズ錠(一般名:アナモレリン塩酸塩)は小野薬品が申請したがん悪液質に対する適応を持つ薬剤です。
効能効果は「非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんにおけるがん悪液質」、
用法用量は「通常、成人にはアナモレリン塩酸塩として100mgを1日1回、空腹時に経口投与する」
です。
がん悪液質に対するアナモレリンの作用機序
がん悪液質とは、がんの進行に伴って進行していく、脂肪組織と骨格筋の両方が消耗していく病態で、体重減少を代表とする消耗状態が持続的に進行する病態です。多くの場合、食欲不振を合併しているため、食欲不振悪液質症候群と呼ばれることもありますが、体重減少の原因は栄養摂取ではなく、炎症性サイトカインに起因する代謝異常と考えられています。
アナモレリンは、成長ホルモン(GH:Growth Hormone)放出促進因子受容体タイプ1aの内因性アゴニストであるグレリンに類似した作用を持ちます。グレリンは主に胃で産生され、GH分泌促進、食欲亢進、脂肪生成促進などの生体内エネルギー代謝を調節します。アナモレリンはグレリン様作用により代謝異常を改善し、除脂肪体重を増加させる作用があります。
(国内臨床第2相試験で除脂肪体重がプラセボ群に比べ、1.56kg増加したデータ)
再審議を経て了承
エドルミズ錠は2019年8月30日の薬食審・第一部会で審議されましたが、世界初のがん悪液質治療薬ということもあり、有効性の評価、がん治療薬との相互作用を含めた安全性、どのようなケースで使用するのかなどの様々な意見が出されて承認見送りとなりました。その後、小野薬品は部会で出された意見についての回答をまとめ、その内容について2020年12月11日の薬食審・第一部会で再審議、承認了承となりました。
再審議の際、エドルミズ錠の申請内容については以下のような変更がくわえられました。
- 適応:がん種を限定しない → 非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんに限定
- 用法用量に関する注意事項を追加:「投与開始から3週間をめどに効果が認められない場合は原則、投与を中止する」
- 警告欄を追加:
「緊急時に十分に対応できる医療施設において、がん悪液質に十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用するよう注意喚起」
「投与のリスクとベネフィットについて患者又はその家族に十分説明して同意を得た上で投与すること」